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遅咲き_37
そんな顔をさせたいんじゃない。
藍澤も、郁弥も、俺は……………。
「な?」
「…………ならいい。飯、出来たぞ」
「ん、食べる!何かめちゃくちゃ腹減ってんだよなぁ」
「そりゃな。三日もまともなもん食ってなきゃ腹も空くだろ」
そりゃそっか、三日も……………三日!?
「え、待って、三日って何?」
「お前が発情期で意識トばしてた期間、三日」
「嘘、マジ?」
サイドボードに置かれていた自分のスマホを手に取って日付を確認すると、確かに三日もの時間が過ぎ去っていた。
「マジじゃん………」
「嘘なんて言ってどうする。ほら」
立ち上がった藍澤が差し出した手に首を傾げると、「歩けないだろ」と諭される。
「へへ、藍澤なんか優しーな。」
ここは甘えておこうと手を取り、寝室からダイニングへと連れられて、並べられた料理に目を光らせた。
「凄い!どしたの、これ!?」
何度か藍澤にご飯作ってもらったことあったけど、こんなに品揃えの良いことなんてなかった。
「青椒肉絲だ!卵スープまであるし……ほんとに何事?」
「ふっ、寝言」
「寝言?」
「お前が全部寝言で言ってたから。食いたかったんだろ?」
笑いを堪える藍澤だけど、全然我慢出来てない。
めっちゃ馬鹿にしてんじゃん…。
「俺、そんなに食い意地張ってたのかな…」
「夢は願望って言うからな。そうなんじゃないか?」
「なんかムカつくけど……旨そうだから食う」
「ん、席着いとけ」
俺を椅子に座らせて、当の本人はキッチンへと消えていく。それからすぐに炊きたてのご飯が盛られた茶碗二つを手に戻ってきて、目の前の席へと腰掛けた。
「いっただきまーす!」
「急に入れすぎるなよ。腹壊すから」
「分かってるって。…………ん!んー!これ、旨っ!」
口に入れた青椒肉絲はピーマンの香りが高く、筍の食感、肉の甘味、どれを取っても申し分無い。
「さすが藍澤!料理の天才!」
「分かったから、食いながら喋るな」
「だって旨いんだもん。この卵スープも絶品!」
舌鼓を打つ俺に呆れてるのかと思えば、案外その表情は柔らかい。
ガツガツとご飯を掻き込んでいたら、藍澤が思い出したかのように一枚のメモ紙を差し出してきた。
「ん?何これ?」
「預かりもんだ。一緒にいたΩからのな」
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