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遅咲き_40
藍澤が下がったのを見計らって、今度は俺から口を開いた。
「あのさ!郁弥………俺、ずっと謝りたくて………ごめん。あの時、助けてあげられなくて……本当にごめん!」
身体を向けてこれでもかと頭を下げた。
店内に居た数人の客が何事かと目を向けたのが視界を掠めたけど気にせず、一心に頭を下げ続けた。
「………僕怒ってるんだからね」
そう落ちてきた言葉に心臓が鳴る。
そりゃそうだ。当然だ。
「ずっと僕のこと避けて、挙げ句連絡もつかなくなって………僕達、親友じゃなかったの?そう思ってたのは僕だけだった?」
「――違っ……」
頭を上げた先で、郁弥は優しく微笑んでいた。
「僕達、まだ親友?」
「ぁ……でも、俺………俺、郁弥のこと置いて逃げたのに………」
「それは怒ってないよ。だってあの時、陽翔が呼びに行ってくれた先生達のお陰で僕は助けてもらえたし、何より陽翔が巻き込まれなくて良かったって思ってるんだよ」
ね?と再度握られた手の温もりに涙が滲んだ。
あの時掴めなかった手を俺は握り返した。
「ごめん……郁弥、ごめん」
「良いってば。それよりまたこうして陽翔と会えて僕は嬉しい」
俺を見る優しい眼差しはあの頃と何も変わってない。
「ありがとう」
俺の言葉に郁弥が頷きを返すと、藍澤がカクテルをカウンターへと差し出した。
「お待たせいたしました」
「ありがとうございます。陽翔、乾杯しよ?」
掲げられたグラスに俺も飲み掛けのグラスを手にして傾ける。
重なった音を聴きながら、チラッと盗み見た藍澤は目を細めて俺を見ていた。
良かったなと語られているような瞳に、きゅっと唇を噛み締めた。
後でちゃんとお礼言わなきゃな。
カクテルを一口流している間に藍澤は下がっていき、それを確認した郁弥は俺の耳に口元を寄せる。
「あの人ってさ、陽翔の番?」
「…………え!?ち、違うって!アイツとはそんなんじゃないから!」
まあ、番関係を狙ってはいるけど………。
でも世間で言う番って恋人同士って事だし、そんな誤解されたら藍澤めちゃくちゃ怒るんだろうな……。
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