104 / 152

遅咲き_45

「さぁて、連れ出したのは良いけど僕は君の家を知らないんだよね。ちゃんとお家の場所言える?」 「んー……あっち」 「うーん……せめて指差してもらわないと分からないなぁ」 困り声の長谷さん。 その通りだと思うけれど、生憎手をあげる元気が残ってない。 「ねむ……ぃ……」 「あ、ダメだよ。寝たら僕の家連れてっちゃうよ?」 分かってる。 分かってるんだけど…意識がふわふわする……。 「おーい陽翔くん?起きて、ね?………あー、こりゃダメだね。仕方ないなぁ」 思考がふわふわして、その内身体もふわふわし始めた。 「暴れちゃダメだよ?」 「んー…………?」 「もう聞こえてないか。こりゃあ藍澤くんに睨まれちゃうなぁ」 揺れる身体に襲い掛かる眠気に俺は抗えず、ゆっくりと意識を手放した。 次に開けた視界には俺を見下ろす長谷さんの顔がいっぱいに映った。 「……長谷、さん………?」 「うん。おはよう」 「………何してんの?」 「寝顔可愛いなって見てたの」 「何それ……てか、ここって……」 「僕の家だよ」 「そっか。道理で見覚えないと思った。長谷さんのーー……え!?何で!?」 勢いよく起き上がった途端、締め付けるような頭痛に襲われて頭を抱えた。 「痛っ〜〜、気持ち悪いし……」 「うんうん、間違いなく二日酔いだね。はい、水」 渡された未開封のペットボトルを受け取って、乾いていた喉を潤す。 「昨日のこと覚えてる?」 「………何となくぼんやりと………所々抜けてるけど…」 「陽翔くんが僕のこと王子さまとか言うから、拐ってきちゃった」 「え……俺、そんなこと言った……?」 「なるほど、その辺はもう曖昧なわけだ」 納得する長谷さんに、俺は俺で昨日の記憶を辿る。 言ったような、言ってないような……。 「あ!安心してね、まだ手出してないから」

ともだちにシェアしよう!