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遅咲き_46
因みに、とニコッと笑った長谷さんは俺を指差す。
「君が僕のシャツを着ているのは、僕が綺麗好きで汚れたままベッドに入れたくなかったからね」
言われてみれば確かに身に覚えのない服を着てる。
「着替えさせたから裸は見ちゃったけど、それぐらいは役得ってことで許してね」
「はぁ、まあ、別に………」
これが女性だったなら騒ぎもんだが、生憎俺も長谷さんも男だし、騒ぎ立てるようなことはない。
「肌、スベスベなんだね」
「いや、そう言うのはいいんで」
「うーん、もっと騒ぐと思ったんだけど案外冷静なものだね」
少し残念、と肩を竦めた長谷さんは俺の手からペットボトルを奪っていく。
それからベッドが軋む音がして、長谷さんが上に乗り上げたのだと気付く。
「さて、寝てる子を襲う趣味はないんだけど起きたなら話は別かな。陽翔くんのこと食べちゃっていい?」
「………いいって言うと思う?」
「ううん、思わない。でも……」
肩を強く押され背中からベッドへと倒れ込み、細められた目を見上げた。
「番を持たないΩがのこのこαの領域に入ってくるなんて、少し警戒心が足りないんじゃないかな?これは君の責でもあるよ」
「…………長谷さんって何考えてんのか分かんないし、苦手なんだけど」
「わあ、正直だね」
「けど悪い人じゃないとは思ってる」
長谷さんは呆けた表情で瞬きを数回繰り返した。
「……根拠は?」
「直感」
「ふっ、ははは、変な子。藍澤くんが気に入るの何となく分かるかも。そうだね、でももしそれが君の買い被りなら、僕は今から君を襲うのだけれどどうする?」
顔のすぐ横に長谷さんの手が置かれ、ベッドは更に軋む。
「逃がしてくれんなら逃げる」
「まさか。そんなに甘くないよ」
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