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遅咲き_49

やけに突っ掛かるような物言いに思わず反抗心が生まれる。 「いいじゃん、俺が長谷さんと仲良くなったって。藍澤には関係ないだろ。それにアンタこそ俺の知らない所で郁弥と良い感じになってんじゃないの?」 「………何言ってんだ?」 「あーんなニコニコデレデレしちゃってさ」 「デレデレって……はぁ……客なんだから当然だろ」 「俺だって客だし」 「お前は――………お前は、違う」 何だよ、今の間は。 「はいはい、どうせ俺はアンタに付き纏ってるストーカーですからね!」 あー、だめだ。やっぱりモヤモヤする。 「違う、そうじゃな――」 「――あれ、陽翔?」 藍澤の言葉を遮ったのは、店内に入ってきた郁弥だった。 最悪だ……今は会いたくなかった……。 「何だ、来てたんだね。最近忙しそうだったから心配してたんだ」 「………………………」 「体調とか崩してなかっ――あ、ちょっと陽翔!?」 胸に溜まるモヤモヤに堪えきれず、結局俺は郁弥を横切って店を飛び出した。 ムカつく。 ムカつくんだ。どうしようもなく。 何でこんな………。 「――待ってよ、陽翔!」 後ろから掴まれた腕に、俺の足は行く手を阻まれた。 「…………何?」 「何じゃないよ。陽翔、変だよ?僕何かした?」 店から走って追いかけてきてくれたんだ、息上がってる。 「…何も…………」 「じゃあ僕の目見てよ」 「……………………」 嫌だ。見たくない。 今は、嫌だ。 だって絶対、最低な表情(かお)してる………。 「またそうやって、僕から逃げるの……?」

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