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αとΩ_8
side ☓☓☓
懐で聞こえる寝息は気持ち良さそうで、擽られた悪戯心に頬をつついてみた。
「…んーぅ………」
「はは、ふにふにだなぁ」
あどけない子供のよう。
頬を摘まんでも目を覚まさない事を確認して、郁弥くんの着ていたシャツをソッと捲り上げた。
白い肌に残る痕は大小様々で、古いものから新しいものもある。
切り傷や煙草を押し付けられたであろう火傷の痕。
――当たり前なんかじゃない。
それなのにこの子は当然のように受け入れたのだろう。
「………可哀想な子、だね」
指先で痕を辿る。
捩る身体は逃げるのではなく擦り寄ってきたので、面食らった。
「…は…ぁ………んん………っ…」
「………僕の中のαの匂いでも嗅ぎ分けたのかな?」
這わせていた指先を項の方へと持ち上げて、掛かる髪を掬う。
「…身体はこれだけ傷だらけなのに、ここは綺麗なままなんだね」
――当たり前なんかじゃないんだ。
αがΩに付けていい痕はただ一つだけ。
縛る、愛の証。
「慣れちゃダメだよ。ずっと可哀想な子になってしまうから……あのテーブルヤシのようにね」
捲り上げたシャツを戻して、身体を抱き寄せる。
抱き心地が良くて温かい。
すぐに襲ってくる睡魔。
ああ、よく眠れそうだ………。
夢も見ないほどに。
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