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αとΩ_9

何かが動く気配に目を覚ますと、大きく見開いた目と視線が合わさった。 「あ、起こしちゃいましたね…ごめんなさい……」 「おはよ、どうしたの?」 「おはようございます。実はその、トイレに行きたくて……」 モゾモゾと恥ずかしそうに郁弥くんは言う。 眠った時の姿勢のまま、僕が彼の身体を抱き寄せていたせいで身動きが取れなかったらしい。 「ああ、どうぞ。いってらっしゃい」 腕を解放してあげると彼はそそくさとベッドを抜け出していく。 「玄関向かって左側のドアだよー」 「す、すみません。お借りします」 あの慌てよう……ギリギリまで我慢してたのかな? 普通に起こしてくれればいいのに。 身体を起こしてグッと腕を伸ばす。 夢、見なかったなぁ。頭がスッキリしてる。 ベッドを抜け出してキッチンへと足を運ぶ。 覗いた冷蔵庫には昨日のうちに買っておいた適当な食材が詰められている。 普段料理なんてしないし、適当にそれっぽいもの買っておいたけど……考えてみれば郁弥くん朝食食べてく時間あるのかな? 冷蔵庫を閉めて思案にふける僕の元へ、戻ってきた郁弥くんが顔を見せた。 「すみません、ありがとうございました」 「どういたしまして。郁弥くん、朝ごはん食べていく時間ある?」 「大丈夫です。今日は午後からのシフトなので」 「良かった。朝はパン派?お米派?」 「僕はお米です。和食好きなんです」 そう顔を輝かせて答える郁弥くんを見て、自然と僕も笑みを返した。 「和食かぁ、郁弥くんっぽいね」 「そうですか?」 「うん」 「あ、でも長谷さんがパン派ならパンでも……」 「僕も和食好きだから。頑張って準備するね」 再び開けた冷蔵庫に隣からは感嘆の声が聞こえた。 「沢山ありますね。長谷さんも料理好きなんですか?」 「ううん、まさか。普段は作らないよ」 「え、でもこの食材……」 「昨日適当に買ってきただけ」 さて、何を作ろうか。 「昨日って……こんなにですか?」 「うん、だって何が好きか分からなかったし、これだけあれば大丈夫かなって」 「は、はぁ………」 鮭ある……とりあえず焼いておけば和食っぽくなるかな?あ、先に米炊かないとか。 「あ、あの!」 「ん?」 「僕が作ってもいいですか?キッチンお借りすることになるんですけど……でも服とか食事とかお世話になりすぎと言うか……」 招いたのは僕だし気にする必要はないんだけど、郁弥くんの料理は素直に食べたいと思う。 「じゃあ、お願いしようかな」 「は、はい!任せてください!」 グッと握られた両手と満面の笑みに僕は思わず声を出して笑ってしまって、そうしたら郁弥くんは恥ずかしそうに頬を赤く染めていった。

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