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不能_2
書類整理をしていた店長に一声掛けて、「お疲れ様」の言葉を背に受けながら手早く着替えを済ませる。
らしくない自分の動作に内心笑いながらも、動きは止めず裏口から外へと出た。
そこにはスマホを弄る七瀬が待っていて、妙な安堵を覚えた。
「………ぉ疲れさま………」
声は小さいし、目はスマホを見たままだ。
「ああ………待たせて悪かった」
「いや、別に……全然待ってないし……」
「……そうか。じゃあ行くぞ」
歩き出した俺を七瀬は不思議そうに見やる。
「どこに?」
「俺の家」
「え……いや、それは………ちょっと………」
「何か都合でも悪いのか?」
「ま、まあ……」
「ストーカー並みに入り浸っていたくせに?」
「………アンタこそ嫌がってたくせに、どういった風の吹き回しだよ?」
ついてきていた七瀬の足が止まったので、俺も数歩先で足を止め、後ろを振り返る。
「質問してるのは俺だ」
「……………行きたくねぇの」
「どうして?」
「……………嫌だから」
「理由になってない」
スマホを持ったままの七瀬の手首を掴んで、距離を縮めた。
「は、離せよ……」
「ちゃんと理由が言えるなら離してやる」
「……言えなかったら?」
「このまま引き摺っていく」
そのまま口を閉ざした七瀬。
次の言葉を待つも、気配はない。
「決まりだな」
「――え、わっ、ちょっ………待てってば!」
「途中コンビニ寄る」
「話聞けよ、馬鹿……」
後ろ手に聞こえてきた呟きとは反して、腕の抵抗は殆ど見られず、そこからは無言の時間が過ぎていった。
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