124 / 152
不能_5
肩に乗る重みが小刻みに震え始めて、肩口へと目を向ける。
「………何笑ってんの?」
「ふっ、いや……うん、そうだな。思ったより嬉しいって感じてる」
肩が軽くなると同時に視界がぐるりと回転して、笑う藍澤の顔が目の前に広がった。
「わっ……馬鹿、何て顔して笑ってんだよ………」
「笑った顔が好みなんだろ?」
「うっ……確かにそうだけど……そんな真っ直ぐ向けられたら困るじゃん……」
「ふっ、困れ困れ」
うーわ、マジで楽しそうに笑ってんじゃん……。
どうしよ、直視出来ない……。
「何で目逸らす?」
「無理、心臓壊れる……」
「そんな繊細じゃないだろ」
「失礼だな、アンタ……」
「ふっ、はは、ほらこっち向け」
もう一度両頬を包まれる。
あ、これやられると逃げらんないんだよな……。
「なあ、ヤキモチ妬いたって捉えていいのか?」
「うっ……た、多分………?」
「それは俺のことが好きだから?」
見たことない。
こんな表情 した藍澤なんて見たことない。
郁弥にも末松さんにも向けてなかった。
嬉しそうに愛しそうに、少しだけ恥ずかしそうに目を細めて俺を見る。
「藍澤のこと見るとドキドキする。笑うと嬉しいし、難しい顔してると悩む。悲しいときに泣かないから代わりに泣いてやろって思う。もっと知りたいし近付きたいのに、今はめちゃくちゃ緊張してて息が苦しい」
藍澤は何も言わず、ただ俺を見て俺の話に耳を傾けていた。
「これって好きってこと、なのかな?」
頬を包む両手を掴んで、見下ろす藍澤の瞳に問い掛けた。
ともだちにシェアしよう!