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不能_6
「俺に訊くな。お前の気持ちだろ」
「だって………今まで知らなかったんだ、こんな気持ち。自信ない……」
「何だ、それ。普段は遠慮なく来るくせに変なとこで自信ないんだな」
まあいいかと、藍澤は更に笑った。
「七瀬、俺は好きな奴には……いや大切な奴には幸せになってもらいたい。ソイツが幸せであってくれるなら、俺に対する気持ちなんて別に欲しくなかった」
知ってる。
そんな事、もうとっくに分かってる。
そうじゃなかったら、こんなに自分が傷つく道ばかり選んでこないじゃんか……。
「奏輔も紗奈も俺にとってはそう言う対象だった」
「うん…………」
「けど、不思議とお前は違うんだ。お前だけは今までと違う」
どうしてだろう……。
「お前のことは俺が幸せにしてやりたい」
発情期でもないのに、
「出来るかは分からない。俺はαだから、きっとお前をΩの性に縛り付ける」
どうしてこんなに……
「それでも俺に向けられる七瀬の気持ちが欲しいと思う。お前が笑っていられるように、幸せだと言えるように最大限の努力はする」
身体が熱くなるんだろう……?
「だから、頼む。俺のこと好きって言ってくれないか?」
落とされる言葉に全身がゾクゾクと震えた。
恥ずかしくて嬉しくて泣きたくなんてないのに、視界がぼやけて……それでも全然顔を逸らさせてはくれなくて………。
温かい滴が目の端から溢れて、藍澤の手と俺の手を伝ってボロボロと溢れ落ちていく。
「うっ……いっつも俺ばっかドキドキして……やっぱイケメンはズルい………」
「あのな、そんなわけないだろ」
藍澤の両手が軽く目元を拭ってくれて、それからゆっくりと背中へと回っていく。
「……聞こえるだろ?」
耳に当たる胸元から駆け足の鼓動が鳴っていた。
「……一緒だ」
「だろ?で、返事はくれないのか?」
見上げた藍澤は何処と無く拗ねたような顔をする。
何だかそれが可笑しくて、溢れていた涙が引っ込んだ。
「多分、好き……」
「多分?」
「嘘、好き。アンタのこと……藍澤のこと好き」
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