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不能_9
あ、今絶対馬鹿にした。
「口、開けて」
藍澤の指先が下唇を撫でて俺を促す。
誘われるまま開いた唇は情けないことに震えていたと思う。
藍澤が顔を傾けたので、もう一度ぎゅっと瞼を閉じた。
重なると思っていた唇は想像と違う感触を捉えて戸惑う。
襲ってきたのは下唇を食まれる感触。
何か擽ったくて恥ずかし………。
数回食まれた後、今度は下唇に沿うように舌が這わされて思わず身体を跳ね上げた。
「――ぅあっ!?」
「こら、逃げるな」
引き掛けた頭を支えるように後頭部に回された手が、逃げた分を引き寄せて口腔に舌が侵入してくる。
わ、舌入っ………。
「…んぅ……っ…………ぁ…」
逃げ損ねた舌が藍澤のそれと絡み合って、くちゅくちゅと音を立てる。
ざらつく感触が擦りあって、時々吸われては何度も角度を変えて重ね合わせる。
これ、気持ちいい……頭溶けそうになるってこういうことなんかな……。
「……ぁ………んぅ……ふ…っ………」
「お前も、入れてみろ」
そう言って引いていく舌を追いかけて、藍澤の口腔へと忍ばせてみる。
軽く歯を当てられて、間を開けることなく舌先を吸われた。
「…んぁ……ぅ……っ…ハァ…ハァ……」
藍澤が吸った唾液を飲み下して、口が離される。
急に熱を失ったから少し寂しくて、無意識に濡れ滴る藍澤の唇を目で追った。
「……キス、好きか?」
「ぅ……え……?」
「物欲しそうな顔してる」
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