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不能_10

撫でられた頬が瞬時に熱くなって、隠すように両手で覆った。 「み、見んな!」 「今更隠したって遅いぞ?」 「うっさい、ばーか!」 まあいいけど、なんて呟く声も笑っていて存外藍澤は笑う奴なんだなと心の中で思った。 そう油断していたら項を撫で下ろす感覚がして、俺はまた身体を跳ね上げた。 「――わぁっ、もう、突然触んな!」 「自分で視界塞いどいて、よく言う」 「だって、ちょ、何、擽った――」 身を捩らせながら視界の端に捕らえた藍澤は、真面目な顔をして俺を見る。 な、何だよ……さっきまで笑ってたくせに。 「…………もう一度、ここに痕を付けてもいいか?」 「痕って………あのお守りって言ってたキスマーク?」 手は項に添えられたまま、藍澤は頷いた。 「あれって結局何な訳?」 「あれは………番うと決めたΩにαが贈るものだ。番になるには発情期を待たないといけないだろ?その間、他のαからΩを守るんだ。自分の香りを纏わせて、Ωの香りを隠す」 香りを隠す………? あ、そっか! 「まあ、その為には条件があって前のは効果なか――」 「――だからか!」 「………は?」 「ほら、前ちょーっとだけαに襲われたじゃん?あん時さ、あのα、至近距離に居ても俺がΩだって全然気付いてなかったんだ。結果的にはバレちゃったけど、考えてみれば発情期だったのにさ、道中他の奴らに気付かれたりしなかったし……あれって藍澤のお陰だったんだな!」 詰め寄った俺に、どうしてだか藍澤は目を丸くさせた。 「え、違うの?」 「……いや、そう……だな、多分」 「?何で藍澤がビックリしてんの?」 藍澤は言葉に詰まるし、俺は俺で疑問符だらけ。 「なあなあ?」 「………そうか。そうだったんだな」 「何が?」 「いや、効果あったんだなと思って」 「藍澤が自分で解説したじゃん?」 「いやそうじゃなくて………まあ、いいか」 「え、よくない。気になる」 教えろと迫っても、藍澤は笑って誤魔化すだけ。 「ケチ」 「まあ、またいつか教えてやるよ。……七瀬、痕付けていいか?」 「……………いいよ」

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