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不能_12

side ☓☓☓ 変わったように思う。 どこがと言われれば雰囲気としか言えないけれど、特に藍澤くんの方は……。 「…………長谷」 「んー?何かな、藍澤くん?」 「………………………………いや、何でもない」 「あ、そう?」 そう言って黙り込んでしまう。 こんなやり取りを繰り返すのは今日だけで六回目。 何かを訊きたいんだろうけど煮え切らずに引いていく。 平日の開店直後、客なんて来やしないからちょうどいい暇潰しにはなってる。 助け舟を出してもいいんだけど、面白いからもう少し遊んでやろうと悪戯心が囁いている。 「……………長谷、やっぱり…」 「ん?」 「…………………」 口を開けたまま視線を彷徨わせる藍澤くんは正直見ているだけで面白い。 ふふ、面白いなぁ…大方は陽翔くん関連のことなんだろうけど。 僕の見立てでは恐らく二人は想いが通じ合ったんだろう。 それでもって訊きたいことと言えば…デートの場所とか? 彼を喜ばせたいとか言いそうだもんね、藍澤くんは。 微笑ましい、とても。 「…………あー…………お前のこと、性欲が強いと見込んで訊きたいんだが………」 「……………ん?今なんか失礼なこと言わなかった?」 藍澤くんらしからぬ悪口を言われた気がするんだけど、気のせい……ではないよね? 「その…………不能の治し方を知らないか?」 「…………………え?」 それはそれは気不味そうに彼は手元のグラスばかりを見つめてる。 僕は僕で必死に言葉の意味を理解しようと頭を動かす。 不能?不能って……あの……。 「念の為訊いておくんだけど、それって勃起しないってことだよね?」 「……………ああ」 これは驚いたな。 デートなんて可愛いもんじゃなかった。 「………治し方ねぇ。ん?てことは君、童貞なの?」 「………いや、昔からそうな訳じゃないから」 「ふーん……」

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