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不能_15
――僕は彼女が好きだったけれど、弱さを見せてくれない彼女が嫌いだった。
「あの………!」
「え?」
「えっと…美味しくなかったですか……?」
恐る恐る訊いてくる郁弥くんの目線の先には、彼が作ってくれた炒飯がある。
急な誘いにも関わらず了承の返事をくれた郁弥くんは僕の仕事終わりを待って、自宅へと足を運んでくれた。
「ごめんね、考え事してたよ。炒飯凄く美味しい」
「良かった。簡単なものですみません」
「全然。むしろ突然招いて、ご飯まで作らせちゃってごめんね?」
「謝らないでください。好きでやったことですから」
そう言った郁弥くんに笑みを返して、止めていたスプーンを動かし始める。
卵と長ネギのシンプルなものだけど、味付けが丁度良くて僕好みだ。
テーブルヤシを近くで見たいと言う申し出に了承すれば、郁弥くんはすぐに立ち上がって傍まで寄っていく。
そんな背中を目で追い掛けて、僕はいつの日かの別の背中を重ねていた。
「少し触れてもいいですか?」
その声に重ねていた影を消して、笑って頷く。
意気揚々と伸ばされた手と服の隙間から覗くのは、あの青痣。
口に運び掛けていたスプーンを置いて、僕はゆっくり立ち上がった。
「?どうしたんですか?心配しなくても葉を千切ったりしませんよ?」
近付いた僕に彼は冗談混じりに笑ってみせるけど、僕は無言でその手を掴んだ。
「………あの?」
「まだ、会ってるの?」
「え?」
「この手首の痕、最近のものだよね?まだ前の彼と付き合いがあるの?」
僕の言葉に声を詰まらせ、驚いた表情 をしてみせる。
この反応は、図星の証拠。
「こ、れは……」
「ねぇ、どうして?こんな事をされても、どうして君は抵抗しないの?逃げないの?当たり前だと、受け入れてしまうの……?」
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