135 / 152

不能_16

込めた手の力に彼が顔を歪めたことに気付いていながら、僕はその手を離せなかった。 「それとも、そこまでする程好きな相手なの?」 「…………そんなんじゃ、ないです………」 絞り出された声は、否定の言葉を吐く。 「僕はΩです。生まれながらに劣等種だと決まっているんです。Ωがαに逆らえるはずが無い。何一つ敵わないんだから……だから求められれば応えるしかない。僕はずっとそう生きてきたんです。それ以外の生き方なんて、分からない……」 「だったら、今僕が君に足を開けと言ったら君はそれに従うって言うんだね?」 目に見えて動揺するくせに、 「……長谷さんが、望むなら」 本当は嫌だと思ってるくせに、 「そうなんだ。じゃあ――」 どうして、平気な振りばかりするんだ。 掴んでいた手を引いて、僕は寝室へ足を向ける。 よろけそうになる郁弥くんを無理矢理引き摺って、その身体をベッドへと放った。 少しは抵抗するかと思ったのに全くその気配はない。 それどころか自身の服に手を掛け脱ぎ捨てると、次は僕の衣服へと手を伸ばしてくる。 手慣れてる。 動きに迷いがない。 それはこの子の経験の数がそうさせているんだろう。 「奉仕は手と口どちらが好きですか?抵抗ないなら口で……――え、長谷さん?」 「……………………」 「え、ちょ、どうしたんですか!?な、何でそんな泣きそうな顔……」 ――僕は彼女が好きだった。 「僕、何かしましたか?ほ、奉仕は駄目でしたか?」 ――彼女が望んでくれたのなら、弱さを見せてくれたのなら…… 僕は彼女と番っても良いとさえ思ってた。 「長谷、さん……?」 「…………………――言ってよ」 「え?」 ――例え彼女が、血を分けた姉弟だったのだとしても。 「……ぅして……辛いって言ってくれないんだ…………」

ともだちにシェアしよう!