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不能_16
込めた手の力に彼が顔を歪めたことに気付いていながら、僕はその手を離せなかった。
「それとも、そこまでする程好きな相手なの?」
「…………そんなんじゃ、ないです………」
絞り出された声は、否定の言葉を吐く。
「僕はΩです。生まれながらに劣等種だと決まっているんです。Ωがαに逆らえるはずが無い。何一つ敵わないんだから……だから求められれば応えるしかない。僕はずっとそう生きてきたんです。それ以外の生き方なんて、分からない……」
「だったら、今僕が君に足を開けと言ったら君はそれに従うって言うんだね?」
目に見えて動揺するくせに、
「……長谷さんが、望むなら」
本当は嫌だと思ってるくせに、
「そうなんだ。じゃあ――」
どうして、平気な振りばかりするんだ。
掴んでいた手を引いて、僕は寝室へ足を向ける。
よろけそうになる郁弥くんを無理矢理引き摺って、その身体をベッドへと放った。
少しは抵抗するかと思ったのに全くその気配はない。
それどころか自身の服に手を掛け脱ぎ捨てると、次は僕の衣服へと手を伸ばしてくる。
手慣れてる。
動きに迷いがない。
それはこの子の経験の数がそうさせているんだろう。
「奉仕は手と口どちらが好きですか?抵抗ないなら口で……――え、長谷さん?」
「……………………」
「え、ちょ、どうしたんですか!?な、何でそんな泣きそうな顔……」
――僕は彼女が好きだった。
「僕、何かしましたか?ほ、奉仕は駄目でしたか?」
――彼女が望んでくれたのなら、弱さを見せてくれたのなら……
僕は彼女と番っても良いとさえ思ってた。
「長谷、さん……?」
「…………………――言ってよ」
「え?」
――例え彼女が、血を分けた姉弟だったのだとしても。
「……ぅして……辛いって言ってくれないんだ…………」
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