3 / 112
せめて 抱きしめて〜起〜 3
特にこの辺りは生徒の教室ではなく、教師の準備室があるので、余計に人がいなかった。
ボクは今出てきた理科準備室を見上げる。
テスト問題をもらう約束で、教師とセックスした。
あとは数学と国語だ・・・男の教師でよかった。
女相手にはこの手は使えない。
歴史と英語は女なので、また赤点だな。
赤い夕陽が差し込む廊下を歩く。
ペタペタと上履きが音を立てる。
学年が変わって一ヶ月。みんなそろそろ新しいクラスに馴染む時期だ。
ボクは今年二年生になるが、クラスメートの顔も名前も知らない。
覚えようと思わない。
クラスメートも、ボクに話しかけようとしないし、いないものとして扱っている。
学校に来ても授業中は寝てるか、サボるかしている。
勉強なんかせず、セックスばかりしていた。
毎日、毎日、セフレの先輩と教師に犯されに来ている。
セックスしないと生きていけない。
そのために、こうして男しかいない高校を選んだ。
一応進学校なので、親も文句言わずに通わせてくれた。
実際には勉強なんかしてないで、セックスしてるだけだって知ったら、どんな顔するかな?
一階まで下りて自分の下駄箱まで歩く。
ここまで来ると生徒がちらほらと現れる。
みんな部活や委員会を終わらせて、帰るのだろう。
ボクは靴を履き替えると、鞄を肩から斜めかけにして、外に出る。
春とはいえ、もうすぐ5月になるので、だいぶ気温が上がっている。
生暖かい風が頬を嬲(なぶ)って、気持ちがいい。
冬の間に落ちた葉を、青々と繁(しげ)らせて、桜は元気だ。
校門まで歩く途中で、グラウンドで団体になって走っている野球部を見つけた。
みんな練習後なのだろう。汗だくで疲れているようだ。
でも、瞳だけはきらきらと輝いている。
隣の部員と話したり、かけ声をかけたり、仲が良さそうだ。
ボクは、立ち止まってしばらくその光景を眺めていた。
「いいなあ・・・」
思わず呟(つぶや)いた。
ボクが欲しかった日常がそこにはあった。
でも、もう手に入らない。
中学生のあの時に、全部壊れたから。
ともだちにシェアしよう!