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せめて 抱きしめて〜起〜 3

特にこの辺りは生徒の教室ではなく、教師の準備室があるので、余計に人がいなかった。 ボクは今出てきた理科準備室を見上げる。 テスト問題をもらう約束で、教師とセックスした。 あとは数学と国語だ・・・男の教師でよかった。 女相手にはこの手は使えない。 歴史と英語は女なので、また赤点だな。 赤い夕陽が差し込む廊下を歩く。 ペタペタと上履きが音を立てる。 学年が変わって一ヶ月。みんなそろそろ新しいクラスに馴染む時期だ。 ボクは今年二年生になるが、クラスメートの顔も名前も知らない。 覚えようと思わない。 クラスメートも、ボクに話しかけようとしないし、いないものとして扱っている。 学校に来ても授業中は寝てるか、サボるかしている。 勉強なんかせず、セックスばかりしていた。 毎日、毎日、セフレの先輩と教師に犯されに来ている。 セックスしないと生きていけない。 そのために、こうして男しかいない高校を選んだ。 一応進学校なので、親も文句言わずに通わせてくれた。 実際には勉強なんかしてないで、セックスしてるだけだって知ったら、どんな顔するかな? 一階まで下りて自分の下駄箱まで歩く。 ここまで来ると生徒がちらほらと現れる。 みんな部活や委員会を終わらせて、帰るのだろう。 ボクは靴を履き替えると、鞄を肩から斜めかけにして、外に出る。 春とはいえ、もうすぐ5月になるので、だいぶ気温が上がっている。 生暖かい風が頬を嬲(なぶ)って、気持ちがいい。 冬の間に落ちた葉を、青々と繁(しげ)らせて、桜は元気だ。 校門まで歩く途中で、グラウンドで団体になって走っている野球部を見つけた。 みんな練習後なのだろう。汗だくで疲れているようだ。 でも、瞳だけはきらきらと輝いている。 隣の部員と話したり、かけ声をかけたり、仲が良さそうだ。 ボクは、立ち止まってしばらくその光景を眺めていた。 「いいなあ・・・」 思わず呟(つぶや)いた。 ボクが欲しかった日常がそこにはあった。 でも、もう手に入らない。 中学生のあの時に、全部壊れたから。

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