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せめて 抱きしめて〜起〜 4
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中学校に入学したボクは、低い身長を伸ばしたくて、バスケットボール部に入部していた。
小さい頃から背が低く、同い年の子と比べても女子と同じくらいしかなかった。
おまけに顔は母親譲りの女顔で、目がやたらと大きくて、肌の色も白くて、いつも同級生に「女」って揶揄(からか)われていた。
髪は父親譲りで真っ黒のストレートだった。
ボクは前髪は分けたりしたかったが、それもできないくらい頑固なストレートなので、そのままにしていた。
骨も細くて、筋肉も全然なくって、女みたいに華奢(きゃしゃ)な体をしていた。
それが嫌で嫌で、せめて身長は伸ばしたいと思った。
単純に、バスケ選手が背が高いので、ボクも背が伸びるだろうと思っての選択だった。
練習は厳しくて、厳しくて、いつもヘトヘトになって家に帰り、倒れるように眠っていた。
母親が心配するくらいに疲れていたので、正直ボクには向いていなかったのだと思う。
もともとの筋肉量が少ないこともあり、基礎体力をつけるのが難しかった。
一学期をなんとか過ごし、夏休みには合宿があった。
長野県の山に学校が施設を所有しており、毎年、運動部が時期をずらして合宿を行っていた。
東京とは違って涼しい風が吹くので、ボクは夏バテせずに練習をこなしていた。
朝から夜までバスケだけをして、夜はみんな早々に寝ていた。
修学旅行とかみたいに、誰も夜更かしをするような余裕はなかった。
そのはず、だった。
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