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せめて 抱きしめて〜起〜 11

新着メールが来ていた。 開くと珍しく母からだった。 今日は夜に時間が取れるので、一緒に食事をしようという内容だった。 指定場所は、母の知り合いが経営するレストランだった。 食事ね・・・どうせまた来れないくせに・・・。 そう思いながらも、了解の返事をする。 ベットから起き上がって、クローゼットを開ける。 制服からグレーのズボンと濃紺のジャケットに着替える。 フレンチのお店なので、さすがにTシャツとジーンズというわけにはいかない。 財布とスマートフォン、鍵をポケットに入れると、ボクはまた通用口から家を出た。 駅まで10分の道をのんびり歩く。 急いだって仕方ない。どうせあの人は来ない。 来ない、来ないと思っているのに、どうしてボクは店に向かっているのか。 自分が滑稽(こっけい)だった。 電車に乗り、乗り換えたりして30分後に目的の店がある駅についた。 都内でもお洒落だと言われる地域だ。 駅から少し離れた所に店があるので、ボクはまたのんびりと歩き出す。 この期に及んで、行こうかどうか迷い始めた。 行っても仕方ない。 どうせまた来ない。 そう思っているのに。 それでも足が止まらない。 地面を見つめながら、眉根を寄せて、むっとした表情で歩いていると、不意に前方から、 「・・・織懸(おりかけ)?」 と声がかけられた。 こんな所で名前を呼ばれて、驚いて顔を上げると、中学校時代の先輩の顔が見えた。 白シャツにグレーのジェケットを着て、ジーンズという出で立ちだった。 ボクより2歳年上なので、今年大学生になっているはずだ。 かなり驚いているらしく、素直に驚きの表情を浮かべている。 「・・・部長・・・」 そう、今目の前に立っている人が、全ての元凶だ。 ボクの初めての男。 ボクを輪姦(まわ)した人。 ボクをこんな体にした男。

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