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せめて 抱きしめて〜承〜 13

期待しながら行くけど、やっぱり誰も来ていなかった。 まあ、まだ時間あるし・・・結構みんな時間にはルーズなほうだし・・・。 自分にそう言い聞かせるが、待っているとだんだん不安になってくる。 今日でいいんだよね・・・昨日も明日ってみんな言ってたし・・・合ってるよね・・・。 ボクはスマートフォンで予定を確認したりする。 今日だと何度も確認していると、頭の上で、 「千都星・・・おはよう」 と剛さんの声がした。 ぱっと顔を上げると、剛さんのいつもの笑顔があった。 ボクは心の底から安堵して、 「おはようございます」 と、笑顔で言った。 剛さんに対しては自然と笑顔が溢れる。 剛さんはいつも通り黒のTシャツにジーンズで、スニーカーを履いている。 バックはボクより小さいのを一つ持っているだけだった。 どんな格好をしてても、剛さんはカッコいいな。 ボクの笑顔を見て、剛さんはほっとしたように優しい笑顔を見せてくれた。 「良かった・・・」 「え?」 首を傾げたボクに、剛さんがいきなり頭を下げた。 深々と綺麗な姿勢だった。 「この前はごめん・・・本当にごめん。いきなりあんなことして・・・」 「いえ・・・怒ってません」 ボクは慌てて首を横に振って、嫌じゃなかったことを伝えようとする。 剛さんは恥ずかしそうに頭をかきながら、 「本当は千都星がもう来ないんじゃないかって、不安だった。でも次の日も来てくれて、嬉しかった」 「剛さん・・・ボク本当に・・・怒ってませんから」 剛さんに怒ってないことを、嬉しかったことを伝えたくて、剛さんのTシャツの裾(すそ)を掴んで、見上げる。 「その・・・本当はその・・・」 剛さんが真っ直ぐにボクを見つめるので、ボクは代わりにだんだん視線を下げてしまった。 剛さんに恋をしている自分が、剛さんを汚しそうで恐くなった。 「千都星・・・?」 「・・・本当は・・・嬉しかったん・・・です・・・」 蚊が飛ぶような小さい、小さい声でやっとそれだけが言えた。 ボクが引っ張るから、Tシャツの裾が伸びてきている。 ボクはそれをじっと見ていることしかできなかった。 剛さんの顔を見ることができない。 恥ずかしくて、気絶しそう。 「本当に?」 剛さんの少し緊張した声。 顔を上げると、真剣な表情をした剛さんと目が合った。 「はい・・・」 ゆっくりと頷いた。 ふと、裾を掴んだままのボクの手を剛さんが両手で包むように握る。 少しずつ顔が近付いてくる。 あ・・・キス・・・しようとしてる・・・?

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