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せめて 抱きしめて〜承〜 25

「だ・・・大丈夫です・・・」 それだけ言うのが精一杯で、顔を出すことが出来ない。 顔が真っ赤なのがわかる。 変に緊張していて、身体が強張(こわば)っている。 目をきつく瞑(つむ)っていると、いきなり毛布を引っ張られた。 「もう起きろ。ご飯できてるぞ」 「・・・起きますから・・・一人にして下さい」 「・・・おはようのキスしたいんだけど」 「ふえええっ?!むりです!いやです!」 毛布をぐいぐい引っ張られる。 ボクは負けじと毛布を引き寄せる。 恥かしい! こんな顔、剛さんに見せられない! でもボクは力が弱いので、あっと言う間に毛布は奪われた。 顔を隠していた腕を掴まれて、ベットに押し付けられる。 上に覆い被さる剛さんと目が合った。 剛さんは、きちんと顔も洗っていて、いつものTシャツとジーンズに着替えている。 「おはよう」 嬉しそうに笑って言うから、ボクは伏し目がちに、 「お・・・はようございます・・・」 と小さい声で言った。 剛さんの指がボクの顎(あご)を捕らえて、少し上に向かせる。 そして口吻(くちづ)けをした。 そっと触れるキスをすると、瞼(まぶた)にもキスをしてくれる。 ボクは目を閉じて、剛さんの口唇の感触を噛み締めていた。 口唇が離れたので、瞳を開けると、剛さんの笑顔が見えた。 つられてボクも笑顔になる。 「早く着替えて下に来いよ」 剛さんはそう言って、再びキスをすると、立ち上がって部屋を出て行った。 ボクは昨夜のことも、今のことも、夢じゃなかったことを感じて、ベットから出た。 着替えて階下に下りると、ボク以外はもう全員起きていた。 ボクは昨夜のことがあって、まだ剛さんを意識してしまって、顔を合わせるのも会話するのも恥ずかしかった。 燿子さんに何かあったのか聞かれてしまうほど、ボクの態度がおかしくなっているのを、みんなが気付いていた。 ボクは何でもないとしか言えなかった。 そしてその日の夜、ボクは剛さんを自分から草原に誘って、抱いてもらった。 剛さんの恋人になりたかった。 こうやってセックスするだけの関係じゃなくて、ちゃんと恋人になりたかった。 でも自分からその言葉は言えなかった。 抱いてくれる剛さんにしがみついて、甘えても、その一言が言えなかった。

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