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せめて 抱きしめて〜承〜 26

もう家に帰る日になってしまい、車に乗り込んで元来た道を戻って行った。 帰りたくなかった。 あの家にも、学校にも、戻りたくなかった。 このまま剛さんと一緒にいたかった。 もう孤独(ひとり)には堪えられそうもなかった。 ボクの願いは叶わず、車は来る時に待ち合わせした駅に着いてしまい、解散となった。 ボクがいつまでも帰ろうとしないので、剛さんが送って行くと言ってくれて、一緒に電車に乗った。 電車の中から夕陽が見えた。 オレンジ色の太陽が眩しい。 家が近づくにつれて、どんどん無口になるボク。 剛さんは何も言わずに傍にいてくれた。 駅についてしまい、改札を出る。 帰りたくない・・・あの家には・・・一人になりたくない・・・。 ゆっくりと歩くボクの隣に、剛さんは寄り添ってくれている。 そして、ボクの手を握ってくれた。 温かい、大きな手が、ボクを包み込む。 驚いて見上げると、剛さんが前を見たままで、耳まで赤くなっているのが見えた。 蝉がジージー鳴いててうるさいのに、急に聞こえなくなる。 自分の心臓の音が、耳元でガンガン鳴ってる。 ボクは、剛さんの手を強く握り返した。 全身から汗が吹き出る。 こうやって一緒にいるのが、恥ずかしいけど嬉しい。 今までこうやって一緒にいたいと思った人がいなかったから、何もかもが初体験で。 ボク達はゆっくり、ゆっくりと歩いた。 何も話せないまま、ゆっくりと。 それでも、家まであと少しという所まで来て、ボクは勇気を振り絞って剛さんに言った。 「あの・・・剛さん・・・」 「ん?」 剛さんが立ち止まって、ボクを見つめる。 ボクはしっかりと剛さんを見上げて、自分で思ったよりも大きな声で、 「・・・今日、泊まってって下さい」 と叫んでいた。 剛さんが驚いて、慌てて周囲を確認して、誰もいなかったのでほっとして。 ボクは剛さんの手を強く強く握り締める。

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