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せめて 抱きしめて〜承〜 27

「一緒にいたいんです・・・家に帰っても一人だし・・・剛さんと離れたくない・・・お願いです・・・」 剛さんの目を真っ直ぐ見つめてそう言った。 断られたら、死んじゃいそう。 剛さんはボクがあまりに必死だったので、軽く溜め息をつくと、 「わかった。一緒にいよう」 と言って、手を握り返してくれる。 「ありがとうございます」 思わず笑顔になる。 ボクが笑うと、剛さんは複雑な笑顔を浮かべて、照れたように頭をかいている。 「・・・その笑顔、反則だろ」 「え?」 「千都星が可愛いってこと」 そう言って剛さんはボクを引っ張るようにして、歩き出した。 首まで真っ赤になっている剛さんを、ボクは後ろから追いかけながら見ていた。 暑いだけじゃないことはわかっていた。 ボクは隣に並んで、早足で歩きながら、 「夕飯どうしますか?うち、冷蔵庫に何もないです」 外で食べて帰るなら、駅の方に引き返さないとお店がない。 剛さんは、 「あ〜・・・買い物してくか。簡単なもんならオレ作るし」 と予想もしていなかったことを言った。 「え?!料理できるんですか?」 「料理と呼べないくらいの簡単なものだけどな」 「くすくす・・・剛さんのご飯食べたいです」 ボクは、手を握ったまま体を押し付けるように密着させる。 剛さんは逆に離れようとする。 剛さんが周囲を気にしながら、困ったように眉根を寄せる。 ああ・・・そうだよね。 男同士でいちゃいちゃしてたら、噂になるよね・・・イヤ、だよね。 ボクは体を離して、繋いでいた手を放した。 「千都星・・・」 「こっち曲がるとスーパーなんです」 ボクは少しはしゃいだ風に装って、走って道を曲がった。 曲がってすぐのところに全国チェーン店のスーパーがある。 「剛さん、早く。今タイムセールやってますよ!」 「わかった、わかった」 剛さんは笑顔を見せると、ボクの後を追いかける。 これでいい。 こうやって普通を装って、剛さんに負担をかけないように、迷惑にならないように。

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