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せめて 抱きしめて〜承〜 32
呆れた?
怒られる?
軽蔑される?
恐くて、恐くて、きつく目を閉じる。
剛さんはそんなボクの額にキスをしてくれた。
「・・・千都星が好きだから、一緒にいたい。千都星がオレを好きでいてうれて、すごく嬉しい。こういうのは、恋人じゃないのか?」
ボクは目を開ける。
剛さんの真剣な表情(かお)が見えた。
「セックスがしたいから、千都星と一緒にいるんじゃない。そんなんじゃない。千都星が好きだから、守りたいから、傍にいたい。それじゃダメか?」
ボクは何も言えなくって、何て言ったら良いのかわからなくて、ただただ頭を振る。
剛さんが流れたボクの涙を、そっと・・・舌で舐めとる。
「千都星、好きだ」
「ボクも・・・大好き、大好き。剛さんが大好きです」
「千都星、千都星」
名前を呼びながら、再びキスをする。
口唇を離しては、名前を呼んでくれて、好きだと言ってくれた。
もう、何もいらない。
親に捨てられてもいい。
友達なんか一人もできなくていい。
他の誰かに愛されなくてもいい。
お金もいらない。
地位とか名誉とかそんな下らないものもいらない。
何も、なんにもいらない。
この人が手に入るなら。
この人が傍にいてくれるなら。
この人が抱きしめてくれるなら。
この人が口吻けをしてくれるなら。
何にもいらないから。
何も望まないから。
だから。
だから。
この人をボクから奪(と)らないで。
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