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せめて 抱きしめて〜転〜 1
転
それからは剛さんと恋人の関係になった。
毎日一緒にいたくて、ボクは剛さんに会いに行く。
たまにいつもより遅く行くと、剛さんが何かあったんじゃないかと、すごく心配してものすごい量のメッセージを送ってくる。
あえて返信しないで顔を見せると、安心したように笑ってくれる。
まだ夏休み中なので、ボクはずっと剛さんと一緒にいた。
セフレから連絡があっても、全部無視した。
どうせ学校が始まったら、嫌でも顔を合わせなきゃいけないんだから、今くらいは会いたくない。
ボクの家には誰もいないし、剛さんもお父さんが帰って来ない日があるので、そういう時はボクの家に泊まってくれた。
二人でご飯を作って一緒に食べて、ボクのベットでセックスをして眠る。
剛さんに抱き締められて眠ることが、すごく幸せだった。
隣に好きな人がいてくれることが、その体温がとても安心した。
今まで生きてきて、一番幸せな夏だった。
もう二度と手に入らない、幸せだった。
いよいよ明後日は大会なので、みんな朝から練習をしている。
真剣そのものの様子で、少し空気が緊張している。
剛さんはいつも通り。
それでも時折鋭い目をするのが、カッコイイと思う。
ボクは耀子さんと打ち合わせ。
当日は時間が少ないので事前に色々準備する。
そういえば顧問の先生がいないから不思議だったのだが、別の部と掛け持ちで普段はそっちにいるらしい。
剛さんと耀子さんに任せっぱなし。
試合の時は来るから、ボクは試合前の準備は手伝って、あとは応援席からの観戦となる。
慌ただしい一日を終えて、ボクと剛さんは帰路につく。
あれから毎日家まで送ってくれる。
二人になれる時間が少ないので、ボクはこの時間が大好きだった。
手を繋いで一緒に歩く。
それだけでも満ち足りた気持ちになる。
ボクの家の前に着いたら、今日は泊まれるのか聞くのが、日常になっていた。通用口に着いて、ボクが決まった台詞を口にする。
「今日はどうしますか?」
繋いだ手を放さずにそう訊くと、剛さんは残念そうに微笑む。
「ごめん・・・今日は親父帰って来るんだ。明日は試合前だから、家にいるよ」
「そうですか・・・しょうがないですね」
明るく笑って言ったつもりだったけど、剛さんがボクの頭を軽く撫ぜる。
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