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せめて 抱きしめて〜転〜 13
*
翌日。
ボクは彼の腕の中で目を覚ました。
名前も知らない人とセックスをして、その人の腕の中で眠った。
温かくて、何だかほっとして、深い眠りに落ちてしまった。
夢も見ないくらい、深く深く眠っていた。
目が覚めたのは、冷房が切れているので部屋の温度が上がり、あまりの暑さのせいだった。
ボクはまだ眠っている彼の腕から逃(のが)れて、ベットから出る。
起こさないように、そっと部屋を抜け出すと、勝手にシャワーを借りて、頭から熱いお湯を浴びた。
昨夜は結局あれから何度もした。
何度もイかせてくれたし、彼も何度もボクの中に出した。
剛さん以外の人で、あんなにイっちゃうとは思わなかった。
何度も可愛いって言ってくれた。
何度も抱きしめてくれた。
まるで恋人のように扱ってくれた。
変な人。
本当に変な人。
今は、その優しさが嬉しかったし、苦しかった。
ボクには、優しくしてもらえる資格なんてないのに。
ボクはシャワー終えて着替えて、そっと家を出た。
お金は事前にもらっていたので、起こさないように出て行った。
昨夜は朝方まで犯っていたので、起きた時は既に昼を回っていた。
シャワー浴びたりなんだりで、今は結局15時過ぎになっていた。
どうしよう・・・でも、行くとこがない・・・。
家に帰りたくないし。
何処にも行くところがない。
ボクは自然と剛さんがいるはずのT大へと向かっていた。
会いたい。
剛さんに会いたい。
最低だとわかっている。
あの人以外の男に抱かれた翌日に、会いに行くなんて。
何も知らないあの人に。
どのツラ下げて会うつもりなのか。
それでも、会いたい・・・。
会いたくて、会いたくて、死にそう。
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