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せめて 抱きしめて〜結〜 11
*
いきなり剛さんが現れたことにも驚いているのに、いきなりプロポーズされてボクはパニックになっていた。
とりあえず外で話してたら近所迷惑だし、誰に見られるかわからないので、ボクは剛さんを部屋に上げた。
剛さんは恐縮しながらボクの後について部屋へ上がる。
ボクは荷物を部屋の隅に放置して、座る椅子もなく、殺風景で生活感のない部屋を見回している剛さんに、
「どうして、ここがわかったんですか?」
と訊いた。
誰にも教えていないから、剛さんがここを突き止めることなんて不可能なはず。
剛さんは、相変わらず似合わない花束を抱えたまま、
「千都星のお父さんに聞いた。千都星と・・・あんなふうに離れる前に、偶然家の近くで会って。その時に名刺もらったんだ」
「・・・」
「それ思い出して、連絡取ってここを教えてもらった。ご両親・・・離婚したんだな」
「貴方には関係ない」
ボクは頑張って冷たく言い放つと、剛さんから目を逸らして、月が見える窓を見た。
細くて、冷たい銀色の月だった。
剛さんはそんなボクの目の前に立つと、再び花束を差し出して、
「千都星・・・オレと・・・一緒にいて欲しい。オレが千都星を守るから」
「・・・」
「あの時は、本当にごめん。悪かったと、思ってる。あの時は、驚いたのと、ゲームだって聞いてショックで、逃げてしまった。でも、オレが知ってる千都星はそんな子じゃない。淋しがり屋で意地っ張りで、嘘つきで。でも真っ直ぐにオレを好きでいてくれた。大人になって、最近わかった」
ボクが何も言わないので、剛さんが珍しく饒舌(じょうぜつ)になっている。
本当に謝りたいのだと、その気持ちが伝わって来る。
でも・・・。
剛さんは、何も言えないでいるボクが、怒っていると思っているのか、畳かけるように、言い訳するように言い続けた。
「だから、あいつらにあの時のことを聞いた。無理やりだったって・・・千都星が誘ったんじゃないって。・・・もう・・遅すぎるか?・・でも、オレはずっと千都星が好きだった。だから、玉砕覚悟で来た。千都星・・・好きだ。守るから、だから。オレと」
「無理です」
震える喉で、やっと絞り出した。
低くて掠れた声だった。
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