101 / 112

せめて 抱きしめて〜結〜 12

全然違う言葉を吐き出しそうな口唇を、無理やり歪めた。 ボクは口唇の端をあげて、無理に笑顔を浮かべると、剛さんを真っ直ぐ見つめて言った。 「もう・・・遅いです。無理です」 「オレが嫌いだってんなら、諦める」 「・・・・っ!」 『嫌い』だなんて、嘘でも言えない。 剛さんに『嫌い』だなんて・・・どうして言えるの? 毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日・・・何千回も何万回も、何千回も何万回も、好きだと叫び続けていたのに。 どうして言えるの? 本当はずっとずっと夢見ていた。 こうして貴方が迎えに来てくれることを、ずっとずっと祈っていた。 もしも、もしも、本当に迎えに来てくれたら、貴方の胸に飛び込もうと思っていた。 何も考えずに。 全部忘れて。 貴方に包まれたいと思っていた。 そうできると、思っていた。 でも、できない。 貴方とボクは、違いすぎるよ。 ボクが触れちゃいけない。 貴方は綺麗すぎる。 ボクが汚しちゃいけない。 貴方は純粋すぎる。 だから、ボクには拒否することしか、できません。 剛さんは花束をボクに差し出したまま、迷いのない透き通った瞳で、ボクを見つめ続ける。 ボクは、そんな剛さんが眩しくて、汚れたボクとは大違いで眩しくて、俯いてしまった。 お願いだから、もう見ないで下さい。 こんな・・・汚いボクを、見ないで。 ボクは思い切って、着ていた服をゆっくりと脱ぎ始める。 「千都星?」 少し慌てたような剛さんの声。 ボクは構わずにコートを脱いで、セーターを脱ぎ捨てた。 ズボンも下着も全部脱いで、ボクは全裸で剛さんの目の前に立った。 「千都星・・・」 狼狽(うろた)える剛さんにボクは一歩近づく。 暖房を入れていないので、部屋に溜まった冷気が全身を刺激する。

ともだちにシェアしよう!