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せめて 抱きしめて〜結〜 12
全然違う言葉を吐き出しそうな口唇を、無理やり歪めた。
ボクは口唇の端をあげて、無理に笑顔を浮かべると、剛さんを真っ直ぐ見つめて言った。
「もう・・・遅いです。無理です」
「オレが嫌いだってんなら、諦める」
「・・・・っ!」
『嫌い』だなんて、嘘でも言えない。
剛さんに『嫌い』だなんて・・・どうして言えるの?
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日・・・何千回も何万回も、何千回も何万回も、好きだと叫び続けていたのに。
どうして言えるの?
本当はずっとずっと夢見ていた。
こうして貴方が迎えに来てくれることを、ずっとずっと祈っていた。
もしも、もしも、本当に迎えに来てくれたら、貴方の胸に飛び込もうと思っていた。
何も考えずに。
全部忘れて。
貴方に包まれたいと思っていた。
そうできると、思っていた。
でも、できない。
貴方とボクは、違いすぎるよ。
ボクが触れちゃいけない。
貴方は綺麗すぎる。
ボクが汚しちゃいけない。
貴方は純粋すぎる。
だから、ボクには拒否することしか、できません。
剛さんは花束をボクに差し出したまま、迷いのない透き通った瞳で、ボクを見つめ続ける。
ボクは、そんな剛さんが眩しくて、汚れたボクとは大違いで眩しくて、俯いてしまった。
お願いだから、もう見ないで下さい。
こんな・・・汚いボクを、見ないで。
ボクは思い切って、着ていた服をゆっくりと脱ぎ始める。
「千都星?」
少し慌てたような剛さんの声。
ボクは構わずにコートを脱いで、セーターを脱ぎ捨てた。
ズボンも下着も全部脱いで、ボクは全裸で剛さんの目の前に立った。
「千都星・・・」
狼狽(うろた)える剛さんにボクは一歩近づく。
暖房を入れていないので、部屋に溜まった冷気が全身を刺激する。
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