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せめて 抱きしめて〜結〜 18

* 額が冷たい。 あんなに寒かったのに、今は暑いくらいで、体が汗をかいている。 不意に、頭を持ち上げられて、下に何かが置かれた。 ゆっくり頭を戻されて、ごつごつした感触と冷たさに氷枕だとわかる。 ボクは目を開けた。 熱のせいで上手く開けられず、いつもの半分くらいしか開かなかった。 「千都星・・・起こしちゃったか・・・」 「つよしさん・・・?」 声のしたほうを反射的に見た。 ベットの横に剛さんがいて、心配そうな顔が見えた。 「つよしさ・・・どうして・・・?」 思ったよりもガラガラの酷い声だった。 本格的にウィルスにやられている感じ。 剛さんは、ボクの髪を掻きあげて、頭を撫ぜてくれる。 「朝飯買いに行って戻ったら、熱出してるから、びっくりして。ドラッグストアで薬とか買って来たから、今日はゆっくり寝てなさい」 「・・・だから、どう・・・どうして?放っとけばいいのに・・・げほっげほっ」 咳き込むボクの肩まで布団を上げて、剛さんは頬に軽くキスをした。 「病人放っとけるかよ。いいから寝てなさい。傍にいるから」 「うん・・・」 剛さんが頭を撫ぜてくれる。 とても気持ちいい。 すごく嬉しい。 ずっとこうしていたい。 そう思った。 しばらくそうしていると、いきなりぐ〜っとお腹が鳴った。 剛さんにも聞こえてしまって、くすくすと可笑しそうに笑われた。 「お粥作ってあるから、持ってくるよ」 そう言ってキッチンの方へと行ってしまう。 お粥・・・わざわざ買い物してきてくれたんだ・・・。 このおでこの冷えピタも、氷枕も、薬もご飯も。 全部、全部、剛さんがボクのためにしてくれたこと。 起きれないボクにパジャマを着せて、布団掛けてくれて。 足元になんか温かいものが置いてある。 湯たんぽみたいなものが。 全部ボクのため・・・。 それだけでも嬉しい。 胸がほんわかと温かくなって、目に涙がにじんで来た。 何だか昨日から涙もろくなってる・・・剛さんのせい?

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