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せめて 抱きしめて〜結〜 22
ボクは激しく咳き込みながら、体を起こす。
剛さんはボクが起き上がるのに合わせて、ベットに座った。
ボクは涙でぐちゃぐちゃになった顔で、剛さんの首筋にしがみついた。
「本当に・・・ボクなんかでいい・・・げほっげほ・・・我が儘で・・嘘つきで、淋しがり屋で意地っ張りで・・・くしゃん!・・こんな誰彼かまわず・・・体売るような・・・最低な・・ごほっごほっ!」
剛さんはボクの体を抱き締めて、優しく背中を撫ぜてくれた。
「まあ、今後は売るのは辞めて欲しいけど。今までのことはしょうがない。オレは、千都星の過去も受け入れたい。そして、これからは一緒に歩んで生きたい」
「ふえっ・・・ううっく・・・」
「オレ、千都星じゃないとダメなんだ。他の誰も、好きになれない。千都星だけを愛してる」
剛さんが着ているワイシャツが、ボクの涙で濡れている。
涙が止まらない。
剛さんが好きだという気持ちが、止まらない。
言葉にできないくらい、剛さんが好き。
こんな気持ちを、どう言えばいいのか、ボクにはわからない。
わからないから、陳腐(ちんぷ)な使い古された言葉しか、出て来ない。
「・・・好き・・つよし・・・さんが好き・・・大好き・・・」
「うん・・オレも、千都星が大好きだ」
「本当は・・・ずっと会いたかった・・傍にいたかった・・・げほっごほっ・・・淋しかった・・・淋しかっ・・ずっと、ずっと・・・愛して欲しかっ・・・」
剛さんはボクの背中を摩(さす)りながら、必死で縋(すが)り付くボクの頭をぽんぽんと撫ぜる。
「千都星は、自分のことよりも周りを優先しすぎる。もっと我が儘言っていいよ。我慢しなくていい。ご両親にも・・・もっと甘えていいんだよ・・・」
お父さんとお母さんに?
「できなかった・・・嫌われたくない・・・疎まれたくない・・・大好きだから負担になりたくなかった・・・ふえっく・・・げほっ・・・」
「うん・・・」
「ごほっごほっ・・・二人の足枷になりたくなかった・・・。ずっと傍にいてなんて言わない・・・ボクを優先してなんて言わない・・・毎日帰って来てなんて言わないよ・・・ただ・・・せめて・・抱きしめて欲しかった」
剛さんが、何も言わずに、きつく、きつく細い体を抱き締めてくれる。
流れ込んで来る体温が、冷たく凍っていた心を溶かしていく。
剛さんの首にしがみつく腕に力を込めた。
離れないように。
もう二度と離れないように。
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日・・・何千回も何万回も、何千回も何万回も、好きだと叫び続けていた。
淋しい、淋しい、淋しいと、泣き続けていた。
会いたい、会いたい、会いたいと、祈り続けていた。
命を懸けた願いが、魂を捧げた恋が、叶った。
一生に一度の戀が、届いた。
ボクは剛さんの体温を、息遣いを、匂いを感じながら。
気絶しそうな幸福に包まれていた。
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