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第6話

「四等かよー……しけてんなあ」 乗船の列に並び、船内へと歩を進めながら、相模はブツブツ言った。 「四等って、貨物とほぼ一緒の階じゃんか……通気は大丈夫なんだろうなあ……?」 「予算的に仕方がないのだから我慢しろ。四等とは言え金は取るんだから、そう劣悪な環境ではないだろう」 後ろの音羽が言う。 「……そうだよ、軍用船よりマシだよきっと。娯楽室だってあるってよ?」 通路の壁に留めつけられていた案内板を横目で見ながら、先に立っていた天城が呟いた。 「なにそれフォローのつもり?」 相模が不機嫌に言い返す。すると天城は、突然立ち止まって振り返った。 「なんだよ班長!急に止まるなよ!」 「――悪かった」 「へっ!?」 「今回、確かに、本隊からはぐれたのは俺の責任だった。判断ミスだ。謝る」 肩に担いでいた荷物を下ろし姿勢を正して頭を下げる天城から、気まずそうに視線を逸らすと、相模は指先で頬を掻きつつ答えた。 「まあ――しょうがねえよ――アンタ元は衛生兵だし――あの状況をほっぽっとくってのはきついよな、アンタには」 「おい、後ろがつかえてるぞ」 様子を見ていた音羽が声をかけた。四等船室の通路は狭く、身体の大きな兵士二人が立ち止まってしまうと通り抜けるスペースが無い。音羽の後ろにむっつりした表情で立っている客に、相模は慌てて詫びた。 「おおっと、すんませんね旦那。ホラ班長!アンタがグズグズしてっから!」 「いけね――」 天城は慌てて足元に下ろした雑嚢(ざつのう)を抱え上げ、自分達の船室を探し始めた。

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