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第15話
客引きしようといつものバーへ行こうとしていたノアを、後ろからカスパが呼び止めた。
「ノア。今日あいてる?」
ノアが頷くと、カスパは
「じゃあ、一緒に来て」
と言った。
カスパについて行くと、通路の先に金持ちそうな服装の初老の紳士が立っていた。彼は笑みを浮かべてノア達を眺めている。
「こいつでいいですか?」
カスパにたずねられた紳士が頷く。なんだろう?客を紹介してくれるのだろうか?不思議に思ったノアを連れ、カスパは紳士と共に歩き始めた。
紳士の使っているらしい部屋に案内されると、カスパは服を脱ぎだした。自分が裸になってしまうと、次いでぽかんとそれを見ていたノアの服に手をかけて脱がせ始める。
「ノア、いつものほうでいい?」
小声でそう聞かれ、意味がわからないままつい頷くと、カスパはノアの耳元で
「6:4な」
と囁いた。
紳士は部屋の片隅においてある椅子に腰掛けている。あの人はどうするんだろう?戸惑っているノアの腕をカスパが引き寄せ、接吻した。裸で唇を吸い合う二匹を、紳士は何も言わず見つめていた。
自分と同じネコに抱かれるのは奇妙な感覚だ――カスパは普段相手する男達より、ずっと軽くて柔らかい。そう思いながら、ノアは絨毯の上でカスパと身体を絡めあった。
行為が終わり、その部屋の浴室を使わせてもらいながらノアは、隣で一緒にシャワーを浴びているカスパに訊いた。
「あの人……なんにもしなかったけど、いいの?」
「いいんだよ」
シャンプーをつけた手で髪をかき回しながらカスパが答える。
「人間の中にはさ、ネコ同士がしてるのを見るのが好きだっていう変わったのもいるんだ。心配すんな、料金は二匹分ちゃんともらえるから」
「ふうん……」
石鹸を泡立てながらノアはぼんやりと返事した。ふと思い出してたずねる。
「あ、そうだ。6:4てなんのこと?」
「ええ~、わかんなかった?なんだよ納得してなかったの?チップの取り分だよ」
カスパは髪についた泡を流しながら、呆れたように言った。
「俺が6割でノアが4割。俺がやってやったんだから、ノア、ちっとは楽できたろ?それでいいよな?」
「そういうことか……うん、いい……」
ノアは頷いた。紳士の部屋のシャワーは、自分達が使う共同シャワーよりも、ずっと勢いが強くて温かかった。
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