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第2話
「山本 裕太 さん、お入りください。」
「はい。」
ドキドキしながら、部屋に入る。
今日は15歳の誕生日。バースの検査結果を聞けるのだ。
この世には、男 女と別に、バースと言われる第二性がある。
バースは3種類。αとβとΩ。大体の人はβ。世のイメージとしては、
優秀なα
平凡なβ
劣等なΩ
αは確かに、有名な権力者に多い。
そして、Ωだけ酷い言われようだが、1番特徴的だ。
Ωは男女共に妊娠出来るし、αと子供を作れば、その子は高確率でαとなる。
また、ヒートという発情期が周期的に訪れる。その時期はとても…シタくなるらしい。Ωが劣等といわれるのは、このヒート期があるが故だ。ヒート期にΩが発するフェロモン臭は強烈らしく、αはこの匂いに弱い。
ヒート期にアルファがΩの項を噛むと番い契約を結ぶ事になる。番になると、お互いのフェロモンにしか発情しなくなる。
(ふー、αとか言われたらどうしよう。
いやいや、それはないか。かーちゃんもとーちゃんも、βだからな。普通にβだろ。でも、緊張するなぁ。)
少し童顔と言われる顔、背格好も標準…より少し小柄。
いわゆる平凡くんな俺は、平凡な家庭に産まれた。
両親共にβの場合、99%その子供もβとなる。けれど、その他1%があるから緊張してしまう。
「えーとっ‥‥山本さん、おめでとうございます!」
「え!」
若い先生が資料をみて驚いた顔をした後、笑顔でこちらを向く。
(これは…これはもしや、アル「Ωです!」
「‥え。」
「‥え?」
先生は俺の反応が意外だったように、固まる。
なんとも言えない、いたたまれない空気に包まれた診察室。
目の前が真っ暗になったのを覚えている。
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それから7年が経ち、俺は新社会人となった。
あの忘れられない日からは、毎日が努力の日々だった。
Ωと思われたくない!
いつか、もちもちのふわふわの可愛い女の子と結婚して、平凡ながらも幸せな家庭を築く!
それが俺の原動力。
そもそも、Ωで男とか、誰得なんだよ…
言っちゃ悪いが、Ωは床上手な弱者ってイメージ。強い女の子も好きだけど、守ってあげたいっ!系の女の子が好きだ。
男とか恋愛対象外だし。
とにかく…
αは優秀
βは平凡
Ωは劣等
そんなバースによる差別が問題化した後、バースを公に問う事がタブーとなった。俺にはそれが大変ありがたかった。
周囲に自分はβだと偽ることが容易だったからだ。両親もβだし、何より俺の平凡見かけも役立ち、誰かにΩだと疑われた事はない。
努力の甲斐あり、そこそこ有名な大学に入学したのち、大手企業 スター製薬のヘッドクオーターに入社する事ができた。
誤算といえば、大手企業なだけに、レアなはずのαが社内に多いという事。
αはΩの発するフェロモンに敏感なのだ。
更に、ヒートに入ったΩのフェロモン臭はαの理性を飛ばしてしまう程とか。
まぁ、当初は不安もあったが、社内割引でかなり高価な効力の高い抑制剤も買えるし、日々香水をつけると、心配だったフェロモン臭も案外誤魔化せた。
そして努力。
入社後も、俺の努力は続き、なんとか、能力の高いと言われるαの同期たちにも負けず劣らずやっていた。
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