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第3話

「おはよう〜」 「あ、裕太、久々!おはよう!」 「いや、お前、昨日一緒に呑んだばっかだろ!久々だったのは昨日の話だ!」 朝から一緒に歩きながら戯けてるのは、同期で1番仲の良い吉崎だ。 短く切って自然と立つ黒髪、がっしりとした身体。いわゆるスポーツマンな感じのα。殆どのαが将来の子を見据えΩを恋人に選ぶ中、バースに拘りなくβの彼女と真剣に付き合っている吉崎。いつか、もっと仲良くなったら、吉崎には俺の秘密を打ち明けても良いかもしれない。 「おはよう、吉崎、山本〜。」 「おっす!」 「おはよう!」 入社から半年、それぞれ別の部署に配属され、たまに夜一緒に呑むことはあっても、中々社内では会う事もない。そのため吉崎に限らず、朝の通勤時に同期に会えるとどこかほっとして純粋に嬉しい。 「おはよう。」 「…おはよう。」 「おっ!星野もいたんか!おはよっ!!」 訂正だ。 そうでもない奴もいる。 「あれ、裕太、香水変えた?今日は一際いい匂い。」 ‥なんか近いし。 俺はこの星野 宗介(ほしの そうすけ)が、苦手だ。 少し長い、ゆるいウェーブがかかり斜めに分けた前髪から覗く垂れ目が、いかにも甘いマスクって感じな、高身長イケメン。完璧人間様。 見かけの派手さもあるが、話も上手く、同期の中でもいつも中心にいる。 しかし俺は苦手だ。特に何かをされた訳でもないが、コイツの目線はなんかねっとりしてる。見つめられと、身体の動きがぎこちなくなる。あと、いつも距離が近い。上手く言えないが、何となく、苦手。 「ははは、星野ったら何言ってんだ!いくらスーパーイケメンでも気色悪いぞ!」 「え〜、そんな事ないし〜。俺、良い匂いフェチなだけだし〜。」 「はは、それが気色悪いんだよ!」 吉崎が茶化してくれて、何とかその場を乗り切る。 本当吉崎…吉崎ーっ!まじ好きだわ。友として。 「まぁ、裕太は確かに、石鹸だがフローラルだが、良い匂いするよね!清潔感男子!」 すんすんっ… 吉崎も俺に一歩近き、近くでクンクンする。 「‥って、お前も近いわっ!!」 「えー!」 「はははははは‥」 俺の緊張が、たわいもない話で解ける。そんなこんなで、会社へ向かう。今日はなんかいい日になりそうだ。

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