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第4話 ※星野視点

「初めまして、山本 裕太と言います。出身は千葉県で、、、」 ひと目見た瞬間に、身体に電流が走った。まさにそんな感じ。 (え、なんだこれ。色々通り越して、勃ちそう。。) 退屈なはずの新人研修の自己紹介で彼をみた時の感想がこれ。直ぐに欲しいなと思った。でも、なんか、、普通の子なんだけど。 俺はスター製薬の跡取りとして産まれた。当然の如く、バースはα。 そして、俺が言われて嫌な言葉は、【流石、超一流のαだね】 いつも、(努力した結果なんだけどな。)って思う。 努力しても、家柄が良いからだとかαだからとか、色々と理由付けられるのが嫌だった。そのせいか、いつも斜に構える自分がいた。本心は真っ黒で、もう努力も辞めようかと思ったりしたが、家の事やら世間体やらに雁字搦めで、いつも体裁取り繕っていたら、更に歪んで歪んで、出来上がったのが俺だった。 そんな俺に、裕太は眩しかった。 新人研修で行われるテストで、裕太はいつも中々良い成績を取っていた。成績順位は大体いつも2位。 「へー。山本やるなー。一流αの星野は別格、常勝1位としても、山本もいつも地味に好成績!山本もαだったけ?」 「あのな、バースとか関係ないだろ!努力の結果だよ!きっと星野も頑張ってるんじゃないか?あと、俺βだし。」 (‥裕太!!) 誰かと話してても、なんとなくいつも裕太を視界の隅に入れていた俺は、その話も聞いていた。そして裕太の考え方を聞いた時から、裕太への想いは更に拍車がかり、ずっと一緒に居たいし独占したいし愛してるって思った。それと同時にがっかりもした。 (裕太はβか。) Ωだったら、番契約を結べば縛るのは簡単だ。裕太に会ってからは、初めて自分のα性を喜んだりもしたから、肩透かしを喰らった気持ちだ。 裕太の匂いはなんとも言えない、そそる?匂いなので、自然とΩだと思ってたが。。最初の衝撃も、運命的にαとΩが出会っちゃった的なやつかと、勝手に盛り上がってたのに。 (番契約がないならないで、他に繋ぎ止めようもあるけど、、、不安だな。そうだな。物理的に縛って、閉じ込めよう。うん。そうしよう。としても、権力がないと。。こうなると会社を早く継ぎたいな。) 自分の産まれに感謝したのも初めてだった。基本的に大体世襲制でやっている家業だが【周囲に認められ、ある程度の地位まで上がるのは自力で】という方針だったので、直ぐに使える権力が俺にはない。俺が会社の跡取りという事も、社内で知っている人間は少ないはずだ。しかし、逆に考えれば、ささっとある程度の地位まで上がれば良いわけだ。 『そうだ、京都へ行こう。』的なノリで、自然と考えが纏まり、スッキリした。しかしそこで小さな問題が起きた。 裕太が俺に対してぎこちない。懐かない。人を懐柔する事に自信があったから、不思議だった。 (まぁいいさ。やるなら難しいゲームの方が楽しいよね。) 自分に言い聞かせる。 --- 「まぁ、裕太は確かに、石鹸だがフローラルだが、良い匂いするよね!清潔感男子!」 俺の言葉には大した反応も見せなかったのに、吉崎の言葉には、笑い出し、嬉しそうな反応をみせる裕太。 他人に嫉妬したり、イライラしたり、それもまた初めての経験だった。 (本当に、裕太は俺を楽しませてくれるよ。) 思わず、いつもの良い子な仮面が剥がれ、暗い笑みがこぼれた。

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