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第8話
「うーん。。」
会社の昼休み、俺は弁当を食べつつ、険しい顔で、スマホの画面を睨んでいた。
【皆、今日は花金!クラブへ行こー!】
【え、いきなり(笑】
【行きたいでーす♡】
【仕事帰りにクラブとかww】
【まじかー、今日残業。行きたかったー】
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俺が見ていたのは、SNSのグループトーク画面。どうやら、今夜は同期皆でクラブへ行こう!という話しになっているようだ。
今日は金曜日で明日は休みだし、皆が行くなら行きたい気もする。しかし、俺はΩであり、それを隠している故、飲酒もなるべく避けてきたし、人と極端に近ずく場面も避けてきた。特に酒に弱いので、酔ってボロが出そうで怖いし。なにより、酔ってでも、体温が上がると、Ωのフェロモン臭が強くなる気がする。
(クラブとか、危ない要素しかないよなぁ。でもな、)
【わー、そんなとこ初めて!でも皆となら行ってみたい!!参加しまーす♡】
生田さんも行くらしい。
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室内にけたたましい音が響いている。頭がガンガンする。酒でではない。この状況にだ。
「生田さん、そんなカッコいい彼氏いたんだ〜」
「えへへ、ごめんね、部外者呼んじゃって。。行くって言ったら、心配だから、どうしてもついてくるって彼が聞かなくて。」
「ごめんなさい、急に参加しちゃって。彼女が可愛いから心配で‥」
生田さんの横にはイケメンが居座っているし、生田さんも満更でない雰囲気だ。まー、だって、彼氏らしいからな。ふんっ。
「つまんねぇなー、、、」
「裕太なにぼやいてんだー!ほらぁー!のめぇ〜!」
既に出来上がった吉崎が、酒を勧めてくる。吉崎がこんな風になるなんて、珍しいな。
でも、なんか、もういっか、、
大音量が響く薄暗い店内のせいで、五感がおかしくなって、警戒心も自然と緩くなっていく。
更に、日頃の仕事でのストレスやら、今、目の前の景色へのストレスやらで、もう色々と、どうでもいっかー、という気がしてきた。
「俺も飲むぞっ!」
「おぉ!いつもちまちま飲んでる裕太がのってきたぞ!」
同期に笑われて、ちょっとムッとしてしまい、その日は自分の許容量を超えて飲んでしまった。
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