9 / 63

第8話

「うーん。。」 会社の昼休み、俺は弁当を食べつつ、険しい顔で、スマホの画面を睨んでいた。 【皆、今日は花金!クラブへ行こー!】 【え、いきなり(笑】 【行きたいでーす♡】 【仕事帰りにクラブとかww】 【まじかー、今日残業。行きたかったー】 . . . 俺が見ていたのは、SNSのグループトーク画面。どうやら、今夜は同期皆でクラブへ行こう!という話しになっているようだ。 今日は金曜日で明日は休みだし、皆が行くなら行きたい気もする。しかし、俺はΩであり、それを隠している故、飲酒もなるべく避けてきたし、人と極端に近ずく場面も避けてきた。特に酒に弱いので、酔ってボロが出そうで怖いし。なにより、酔ってでも、体温が上がると、Ωのフェロモン臭が強くなる気がする。 (クラブとか、危ない要素しかないよなぁ。でもな、) 【わー、そんなとこ初めて!でも皆となら行ってみたい!!参加しまーす♡】 生田さんも行くらしい。 ---- 室内にけたたましい音が響いている。頭がガンガンする。酒でではない。この状況にだ。 「生田さん、そんなカッコいい彼氏いたんだ〜」 「えへへ、ごめんね、部外者呼んじゃって。。行くって言ったら、心配だから、どうしてもついてくるって彼が聞かなくて。」 「ごめんなさい、急に参加しちゃって。彼女が可愛いから心配で‥」 生田さんの横にはイケメンが居座っているし、生田さんも満更でない雰囲気だ。まー、だって、彼氏らしいからな。ふんっ。 「つまんねぇなー、、、」 「裕太なにぼやいてんだー!ほらぁー!のめぇ〜!」 既に出来上がった吉崎が、酒を勧めてくる。吉崎がこんな風になるなんて、珍しいな。 でも、なんか、もういっか、、 大音量が響く薄暗い店内のせいで、五感がおかしくなって、警戒心も自然と緩くなっていく。 更に、日頃の仕事でのストレスやら、今、目の前の景色へのストレスやらで、もう色々と、どうでもいっかー、という気がしてきた。 「俺も飲むぞっ!」 「おぉ!いつもちまちま飲んでる裕太がのってきたぞ!」 同期に笑われて、ちょっとムッとしてしまい、その日は自分の許容量を超えて飲んでしまった。

ともだちにシェアしよう!