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第12話
「簡単で申し訳ないけど、是非食べてね。」
服を着替えて隣の部屋に向かうと、いつもの如く微笑む星野がいた。さっきの事が嘘の様な、いつも通りの星野。あれは夢だったんじゃないかと錯覚する。
テーブルの上には、クロワッサンにコーンスープ、サラダとコーヒー。いつでにオレンジジュースまである。コイツは本当に独り暮らしの男なのだろうか。
「わー!凄っ!俺、朝食にあったかスープって久々だわ!」
正直なところ、星野の先程の様子が気がかりで、朝食も食べず帰るつもりだった。しかし、そろそろ肌寒くなる11月も半ば、朝から温かいスープとコーヒーが目の前にあると、つい食べたくなってしまう。
「そうなんだ。それは良かった!」
星野がニコニコしている。うん。いつも通りだな。
「いやー、ホント!俺、星野をお嫁さんにしたい位!」
「、、、、。ふっ、インスタントのコーンスープで、簡単だなぁ。」
ピクリと、一瞬星野が笑顔のまま固まった気がするが、、まぁ、気のせいだろう。うん、うん。いつも通り、いつも通りの反応。
「しかも、部屋めっちゃ広いなっ!綺麗だし。うちの近所でこのレベルと言うと、角を曲がった所にあるライオンズマンション?」
「おぉ、正解!良く分かったね!」
「まじか!単身で住む所なの?賃料とか凄いんだろな。。」
ズズーーっ、、
いつも通り、ニコニコ笑う星野に、温かいスープ、暖かい朝日。緊張が緩む。
「やっぱり、あの噂は本当だったのか。。」
「なんの噂?」
気が緩み、ボソリとだが、考えていた事が思わず声になって出てしまった。
「星野って、うちの会社の経営者一族の後取りって噂。」
「あー、なんだ、その話。そうだよ。」
(、、まじですか!しかも、反応が思いの外薄いのな。)
笑顔のまま、そしてクロワッサンを食べながら、星野が軽く相槌を打つ。
「でも、あまり他言しないで貰えると助かる。バレバレだろうけど、一応、表立っては言わない様にしてるからさ。」
「うん。分かったよ。」
言うても、そんなに星野に興味もないので別に良い。
「けどさ、星野って、本当に完璧って感じだよな。」
「え?」
「仕事出来て、金持ちじゃないか。見た目もイケメンだし。」
「そんな事ないよー」
ないとは言いつつ、幾分さっきより星野が機嫌良くなった気がする。
「実家は厳しくて、お金あっても、そう色々とさせてはくれないし。あと、結構ズボラなとこあって、、ほら。」
「え?」
これは、嫌味か本性がみれるか、どちらかだなと思いながら、星野が指さした先をみる。
「‥ほおぉー、、、」
(本性の方か。)
指差した先には、段ボールの山が積まれていた。所々、開梱されており、物が飛び出ている。
「ほら、引っ越してきて、もうじき1年だというのに、まだこの様だよ〜」
どうりで物がなく、閑散とした家なはずだ。
イケメン完璧人間 星野の、人間らしいところが初めて見れた気がしてかなりテンションが上がった。
「よしっ!おれ、大した家事でき無いけど、掃除だけは大得意なんだ!!片付け手伝うよ!送ってくれたお礼も兼ねて!」
「え!本当に?助かる〜」
星野がキラキラとした笑顔を浮かべ、笑っていた。
星野はその週末から、年末まで休日予定があるとの事で、丁度俺も年末年始帰省はしないので、年末年始の長期連休中に片付ける事となった。
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