14 / 63

第13話

「ふー、結構片付いたな!」 「そうだね。本当に助かったよ。まさか1日でここまで片付くとは思わなかったから、びっくりしたよ!」 星野と家の片付けの約束をした日の夕方、2人で感慨深く部屋を見渡す。足りない棚を買い足したりと時間をロスしたこともあったが、その日の夕方になりやっと、残すところダンボール2つとなった。 「後は書籍類だから、1人でやるよ。本当にありがとう。簡単にしか出来ないけど夕飯ご馳走するから、準備する間ちょっと休んでて〜」 「っえ!いいの?!やったー!」 一日一緒に居たせいか、星野に対する警戒心や苦手意識が薄れていた。そもそも、皆大好き星野だったんだから、これが自然な状態だとすら思えた。 あと、育ちの良さなのか、星野は中々のグルメという事が発覚した。昼に連れて行ってもらった店はかなり美味かったし、美味しいレストランとかも色々教えてくれた。星野が準備する夕飯も、きっと美味いはずだ。 ----- 「美味いっ!」 やはり、星野の用意したご飯は美味かった。 「お口にあったようで良かった〜。ホットワインも、作ったから呑んでよ。裕太に合わせて甘めに作ったよー」 作り置きとかいうお手製ハンバーグを食べていると、星野がホットワインを差し出してきた。湯気にのり、鼻腔からもアルコールが入ってくるのを感じる。俺に合わせて甘いと言うのが、少し癇に触るが、甘い香りとシナモンの香りに釣られて口をつけると、普通のワインよりも確かに甘い。俺でもゴクゴクいける。 -- 美味しいご飯、美味しいホットワイン、ほろ酔いで、気分がすごく良かった。星野とも少し親密になり、話は家族のことにまだ及んでいた。 「あぁ、だから、年末年始帰らないんだ。」   「そうそう、妹が海外で仕事してて次の帰国が1月末なんだ。だからその時に家族で集まるんだ」 「裕太がお兄ちゃんだったとか、意外」 「意外って、、、俺、妹には結構お兄ちゃんって慕われてるし!昔から妹は身体が弱いから、なにかと心配だしさ。」 にへらっ。 星野お得意の笑顔だが、妹の話となると自然と俺から出てしまう。 「ふーん、、、」 星野が拗ねたような、なんとも言えない顔をして相槌をうつ。いつもの星野からは想像出来ない、かなりの子供っぽい表情で笑える。 「星野は兄弟いたりするのか?」 「…うん。弟がいるんだ。」 なんだが、微妙な反応をされる。 (家族仲が良くないのか?桁違いの金持ちだからなぁ、複雑なんだろうな。) 「しかし、今日の夕飯も美味しいし、お昼に教えてもらった店も良かったし、星野はグルメだな!彼女とか連れてく店とかあるの?」 かなり強引だが、場の空気が気まずくて話を変える。 「、、、そうだね。彼女相手だと、味もだけど、雰囲気重視したいな。夜景や海が綺麗に見えるレストランでご飯食べて、食べ終わったら、ホテルにある落ち着いたバーに行って、、」 強引な話の転換だっが、一瞬、星野が嬉しそうに微笑んだ気がした。 「ほー!最後がホテルのバーとか、本当に、やる事がいちいちお洒落だなっ!」 「ふふっ、裕太はそんなデートしたい?」 「へ?、、、うーん、そうだなー。記念日とかには良いかもな!」 大人デートには憧れるが、お金がかかりそうだ、などつい考えてしまう。 「そっか。そうなんだ。。」 ふむふむと頷く星野。俺は女の子じゃないから、参考にならないぞ。 そうやってうだうだしているうちに、俺はいつの間にか寝落ちしていた。

ともだちにシェアしよう!