22 / 63

第21話

「こんにちは。裕太くんとお付き合いしています、星野 宗介です。これ、お茶菓子にでもして下さい。。」 「まぁ!やっと裕太にもちゃんとお付き合いして、紹介出来る人ができたのね。。」 俺の実家にリビングには、キラキラと眩しい笑顔を浮かべる星野とダイニングテーブルを挟んで向かいには、感慨深くしかし嬉しそうにする俺の両親がいた。 『ちゃんと紹介できる』どころの奴ではないんだが、無理矢理強姦されて、その後脅されてお付き合いしてる人です。と親に言う勇気もなく、曖昧に笑って誤魔化しお茶をすする。 「お付き合いしているってことは、裕太のバースも理解の上かな?」 父親が星野の反応を見ながら切り出す。いきなりだな。 「はい。寧ろ、僕としては裕太くんのバースは嬉しい限りです。僕がαなので、いつかは番契約を結んで、落ち着けたらなと考えてますので。」 「そこまで考えてくれているとは、心強い!なぁ、裕太!!」 「ははは、そうだね、、」 αとΩという特殊なバースがあるが故、同性の恋愛も結婚もさほど珍しくはない。しかし、今まで女の子が好き!って言っていた俺の話聞いてた?と思う。だが、まぁとりあえず、星野が側にいるときは、大人しくするに限る。 「裕太には一つ下の妹が居るんだけど、妹の身体が弱くてね。裕太はいつも俺が強くならないとって言っていたのよ。自分のバースにも悩んだりしていたから、理解出来る人が側にいるのは心強いわね。」 寧ろ、コイツがそばに居ることが、俺の窮地だし。ていうか、あまり星野に個人情報を流さないで欲しい。 「裕太は初めてのヒートも遅くて。。更に中々ヒートの間隔も定まらないしで心配で、結局大学2年生までこの実家から大学にも通わせたのよ。だから、家事とかもちゃんと出来ているか心配で。裕太は裕太で、勿論しっかり出来るようになる必要があるけれど、星野くんみたいにちゃんとした人とお付き合いしてて安心したわ。」 これが本当の恋人だったら、恥ずかしいっ!でも嬉しい!!とか、キャッキャするんだろうか。残念ながら相手は星野だ。 「いえいえ、裕太くんはお掃除が得意だと、この前も頑張ってくれましたよ。」 ガタンッッ!! ばんやりお茶をすすっていた俺は思わずダイニングテーブルの椅子から立ち上がっていた。 「ほっ、、宗介!俺の部屋に行こう!うん。そうしよう。早く行こう!まだ、残ってるんだよ!俺の部屋!!」 俺はグイグイと星野を引っ張る。ポカンとした両親を残し、星野を連れリビングを後にした。 ---- 「ははは、裕太、何?変な事考えたの?」 二階にある俺の部屋につくなり、星野がそう言って後から抱きついてくる。 「ちょっと!俺の実家だよ?!ここ!何言ってんの?何してんの?!!」 バタバタと星野の腕の中でもがく俺。星野は涼しい顔でその手を制す。 「裕太がどんな顔するかなと思って。」 星野の腕から抜けるどころか更に密着され、嫌な笑みを浮かべた星野に真横から覗き込まれる。王子スマイルは最近ご無沙汰だな。。 「やめろって!離せって!」 「んーっ、、」 星野は俺の首元に顔を埋め、匂いを嗅ぐ。本当に気持ち悪いな。 「この部屋は、裕太の匂いが濃いよね。俺、したくなっちゃった。」 え。 「いや、、無理、、、」 俺は星野の怖い発言に顔が引きつり、先程の勢いがなくなる。 「無理かやってみようよ。」 そう言う星野に、抵抗虚しく押し倒される。 「無理だって!実家で男となんて出来ないっ!」 「、、ふーん、」 一応という設定だったのに、思わず嫌悪感をそのまま口に出してしまった。俺を組み敷いていた星野が手を止め、真顔でこちらをじっと見てくる。 「じゃ、舐めてよ。」 目の前が真っ暗になる。 「もう、ほんとっ、、、」 「裕太」 「、、!」 「我儘言うなら、声が漏れるくらい激しめにしてあげよっか?」 名前を呼ばれて見上げると、にっこりと笑う星野がいた。そして星野の声には、いつも丁寧に隠している、α独特の威圧感があった。 「いや、、ほんとに勘弁して、俺、、出来ない」 「、、、ふっ、、。弱気な裕太も可愛い。」 そう言って、星野が軽くキスをしてくる。諦めてくれたと淡い期待を込めて星野を見上げる。 「でも、そんな裕太にさせるのが好き〜」 そしてまた、この笑顔に絶望の底に突き落とされる。期待した俺が馬鹿だった。。

ともだちにシェアしよう!