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第23話
「いやー、山本が参加できて良かったよ!」
「ううん、合コンならいつでもウェルカムだよ!」
星野に色々と好き放題された冬の休みも終わり、また日常の中に戻った俺は、同期の永井誘われ、合コンに向かっていた。
永井は、大学時代は遊んでいだろうなと思わせるようなタイプだった。けれど明るくて、同期の中でもムードメーカー的なところがある。明るく顔も悪くないので、きっと大学時代はさぞモテたんだろう。
「くいぎみ!そんななら、星野の前に、最初から山本に声かければ良かったな〜」
「え、星野、来んの??」
ハハハと軽く笑う永井に対して、俺は星野という名前にギクリとする。
「いいや、来ないよ。彼女が出来たらしい。『可愛い彼女に悪いから』だって。ははは、あの星野が、信じられる?!」
「、、、へ〜、、、そうなんだ。」
「星野があんなに惚気るとか、どんな彼女なんだろなー。俺と星野、同じ大学だったんだけどさ、そりゃモテモテだったんだよな、星野。だけど誰と付き合っても長続きせず、去るもの追わずで、なんか淡白なやつだったんだよなー」
「ふーん、、」
、、この話題、何故か聞くのが恥ずかしい。自意識過剰かもしれないが、もしかして、彼女って、、、いや、もしかして、本当に誰か出来たのかも。そうだと良いな。そうあって欲しい。。
「けど今回の彼女には今までになく本気みたいで、先週の土曜日のフットサルにも来なかったし」
あー、星野がお取り寄せしたとかいう鍋セットを持ってきた日か、、
「次の日曜日も、課のイベント初不参加だったらしいし、」
鍋を食べてからずーーと帰ってくれなかったもんな、、
「水曜日の飲み会も来ないし、」
星野に、疲れたから癒してとか言って拉致された日だな。そして、あの日は俺が凄く疲れた。。
「今日も来ない!な?凄いだろっ?!どんだけメロメロなんだってな?」
永井がニヤニヤと話すが、早くこの話が終わらないかなと考えながら聞き流していた。そして彼女って、俺か。俺、男だから。。そして申し訳ないけど、俺は星野を彼氏や恋人とはまだ認められないんだが。とはいえ、星野に合コン行った事がバレたら、大変、、なのかな、?しかし俺だって、彼女が欲しい!
「星野はαの中でも抜きん出てて、色々器用にこなすし、モテるし。あんだけ完璧だと、同じαとしてもやきもちだったんだけど。」
そう言い笑いながらも、何故か嬉々として永井は星野のモテ伝説を話す。
「なっ、永井、もういいよ。違う話しようよ!」
「えっ?山本、興味ないの?同期内どころか、社内でも、皆気になってる話題だよ!受付の吉澤ちゃんとかも、星野にアタックしてたのにーとか愚痴ってたし。」
まじか星野。羨ましい。。
ってか、星野に話聞いて、皆に話広めたの永井、お前だろ。そのせいで、この話題で持ちきりになったんだろ。直ぐに言いふらすのやめてくれっ!
「んー、、俺は星野に興味ないかな。」
ははっと笑いながら言って、しまったと思った。吉澤さんを無下にできるのかという変な嫉妬もあり言ってしまったが、永井は星野と仲が良いみたいだし。同期の集まりの時も、よく一緒にいる。こんな事言われても困るかもなと思ったが、これ以上星野の話を聞きたくなかった。
「?どした?大丈夫?山本、星野となんかあった?俺でよかったら、相談にも乗るから、何かあったら言っていいぞ!」
永井、良い奴。。永井は端的にいうとチャラついた見かけなので、今まで偏見を抱いていたが、実は凄くいい奴なのかも。
「いや、なんかこっちこそごめん。。永井は星野と仲良いのに、困っちゃうよなっ!」
「まー、でもさ、俺は山本とも仲良くなりたいからさ!」
そう言ってにかっと笑う。その笑顔が眩しい。
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「本当皆可愛いね!自分がαだから、Ωだったらいいな!」
飲み始めて1時間経つ頃、永井がヘラヘラと女の子に話しかける。流石チャラついた男は違うな。わりと簡単にバースを聞くからビックリだ。合コンってこんな感じなのか。。
「えー、こっちのこと教えるなら、まず皆さんから教えて下さいよ〜!」
ゆるふわに巻いたロングヘアーの女の子が上目遣いに言う。やはり、男はαが人気な様で、ここにいるのはほぼαだからか、キャッキャと会話が弾んでいる。ちゃっかり、βと言ってたはずの同期もαとか嘘ついてるし。しかし悲しいかな、Ωの俺がαと言うには、何となく幾つものハードルを感じる。とりあえずまたβと答えよう。切ない。
「おれはβなんだ。」
「へー、裕太くんはΩっぽいと思ったっ!」
「え?」
黒髪ストレートのいかにもキャリアウーマンという感じの子が言うので、思わずビックリしてしまった。確か、名前は陽子ちゃんだったよな。
「そう?初めて言われた。」
「確かに!山本は可愛いけど、違うぞー!残念ながらβだよ!残念、残念!!」
「確かに裕太くん、ちょっと童顔だよね!癒し系的な!」
永井が茶化しながらもフォローしてくれて、俺もはははと笑って誤魔化す。その話に食いつき、他の女の子もわいわいしていたが、次第に話題は他の事になっていく。
「ふーん。。」
しかし、黒髪のその子だけは、じっと俺を見つめていた。大きめな猫目が特徴的な子だったので、少し居心地が悪かった。
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