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第28話

その日はそれ以降、一回やると何かが振り切れ、周囲の目を無視し、終始俺は星野の腕に腕を絡め、媚びてやった。しかし、長くやってると、星野も慣れてきてしまったのか、普通にいつもの調子に戻ってくる。甘えるのも、主にメンタルがだいぶ疲れるし、もうそろそろ限界だなと思っていた矢先に、星野が徐に疑問をぶつけてきた。 「裕太、今日はいつも以上に可愛いけど、どうしたのかな〜?」 確かに、こんな急に態度変わると不審だよな。 「宗介、俺…、宗介のこと少し好きになってきた。俺がΩだからかな…。」 多分星野は、αだからって言い寄られるのを良しとしていなさそうなので、暗にαに惹かれてます風に言ってみる。 「ふーん。…なんであれ、それは嬉しいな〜。」 ちっ。 星野は、少し考えるように、首を傾げて探るような目つきで俺を見てきた。しかし直ぐに、極上の笑顔を浮かべて『嬉しい』なんぞ言うので、内心舌打ちしてしまう。まぁ、星野のなかでは、付き合いたての、何でも幸せ期だろうから、この反応は仕方ないか。…付き合ってると思ってるのは星野だけだけど。 「じゃ、宗介、俺はもう帰るね。今日はありがとう。」 吹っ切れたとは言え、人前で星野にベタベタした俺のメンタルはそろそろ限界だ。1人になって、何も考えずに風呂に入って寝たい。 「え〜、夕飯作るし、泊まってきなよ。」 「うんー…、もっと一緒に居たいけど、家に帰るよ。服や下着の替え持ってないしさ。」 だって泊まったら、やられてしまう気がする…。もう嫌なんだよ。 「下着なら前買ったのまだあるし、服は貸してあげるよ〜。」 最近は、ベットですぐにすっぽんぽんにされ、事に及ばれ、そのまま気がつくと朝、俺の下着は星野が既に選択済みパターンなので、俺の新品下着在庫は星野宅に溜まってる。しかし、もう、今日は勘弁して欲しい。 「星野の服のサイズ、俺にはデカ過ぎて合わないからさ…。」 面倒だな…。貴方が好きです。とか言った手前、もう早く別れて1人になりたいんです。って言いづらい…。 「…分かった。じゃぁ、折角だし、夕飯だけご馳走になるよ…。」 引く様子のない星野をみて、結局俺が折れる。あぁ、早く星野とおさらばしたい……。 ---- 星野のマンションに着き、星野が玄関をガチャガチャ開けてる時から微妙に星野の雰囲気が変わった。嫌な予感がする。星野はやたら、焦っているような、乱暴なような、そんな仕草でドアを開ける。 「…?そう……わっ!ちょっっっ……!!」 何事かと尋ねようとすると、急に手を引かれ、部屋に押し込められる。 「おっわっっっ…!!ぶっ!」 ドタンッッッッ ガシャンッ 俺は余りの勢いに、玄関でこけてしまい、後ろでは乱暴にドアが閉まる音がする。何とか手をつけたが、打った膝がジンジンする。 「痛って……」 「………」 「宗介、お前、何やっ……ッッゥ!」 (え、怖っ……) なんとか体を捻って上半身を起こし、後ろにいる星野の様子を確認する。星野は薄明かりの中、やたらギラついた目で俺を見下ろしていた。 「…」 ビビって何も言えない俺に、星野がのしかかってくる。 「な、なんだよ…痛いって。宗介って!」 薄気味悪さやら恐怖やら、心中は恐慌状態だ。何か言わないと、この異様な空気に飲み込まれそうで、中途半端に上がった半身で星野を押し返しながら文句を言う。 「っ…!」 不意に星野の両手が俺の両頬に添えられ、俺はぎくりとする。あんなに寒い外に居たのに、星野の手はびっくりするほど熱かった。 「…はっ、裕太。今日一日、ずっと、ずーーっと、こうしたかった。」 「え、なに?…へっぶっっ!」 俺の話を遮り、星野が濃ゆい口づけをしてくる。星野の舌がいつになくしつこく追ってくる。 「裕太、あんなに可愛く甘えてきて……自分抑えるのに、必死だった。」 星野は性急な動作で、俺の服に手を入れてくる。 「え、ちょっ、ここ!玄関だけど!?玄関だけども?!!」 こんな星野初めてだった。人間というより、獣感が強くて、αの本能のままに行動しているようだ。 「あっ…、ちょっと、やめっ……!」 (食われるっっ!) 大きな獣に襲われてる様な錯覚を覚え、僅かに体が震える。 「……ふふ、もー、裕太ぁ、だから震えないでよ。……興奮する。」 (それはお前の問題だろ!変態クソ野郎!!) 俺はろくな抵抗もできず、欲望むき出しの星野にされるがままだった。それはまるで、俺の中のΩの部分が、大人しく強いαに従えと言っているで、ことさら俺は悔しかった。

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