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✳︎番外編①

【注】星野と裕太は番契約前 龍介と蒼は番契約後の設定です。 出てきてる龍介と蒼は、ディストーションの登場人物です。 「なー、宗介の友達ってどんな奴なの?」 「裕太が知ってる人だよ。。」 「?社外の人なのに?」 なんだそれ?共通の友人とかいないはずだけど…?星野が友達に呑みに誘われたとかで、嫌々俺も連れ出されていた。これから俺は星野に、こちら俺の彼女です〜とか紹介されるのか?嫌過ぎる…。 「しかし、めっちゃ高そうな焼肉屋だな…。」 「あー、全額あっちもちだから気にせずじゃんじゃん食べていいよ。」 星野も金持ちだから、星野の友達という相手も金持ちってか?連れられてきたお店は、いかにも高級そうな焼肉屋の完全個室だった。庶民な俺は割り勘だったらどうしようと思ってソワソワしていたので、奢りと聞いてホッとする。いやでも、人のお金で高いものバンバン注文もしづらい。なんにしろ、庶民の金銭感覚ではそうそう入らない店だ。 ドキドキして入るも、まだ個室には誰も居なかった。 「あれー、まだいないね?」 「…そうだな。」 星野と適当に会話する。 「ちょっと、龍介さん!急いで下さい!すみません!遅れました!!」 それから10分ほどして、個室のドアが勢いよく開き男が入ってくる。身長は星野と俺の中間くらいだろうか。息を切らしてあせあせしており、みれば結構普通そうな人だ。俺は肩透かしをくらった気分になる。星野の友達と言うからどんな変な奴かと思ったが、意外にもその人は好感を持てる誠実な雰囲気がある男だった。あと並行眉でなんか困り顔にもみえる。こんな顔した癒し系の動物いそう。 「わー、蒼ちゃん久しぶり〜!」 「宗介さん、ご無沙汰してます!またお会い出来て嬉しいです!あ、これ、この前ライブで沖縄行った時のお土産です。是非食べてください。」 蒼と呼ばれた人は、宗介にお辞儀をして、紙袋を渡している。……腰が低くてしっかり者そうだし、本当に好青年って感じだな。星野の友達とは言え、俺も仲良くなれそう! 「あ、貴方が宗介さんの「おーい、蒼〜、俺を置いていくとは良い度胸だなぁ。しかも宗介に尻尾振ってんじゃねーぞ。」 その後ろから、不機嫌そうな声が聞こえてくる。なんだまだなんか居たのか…。てか威圧感が凄いんだけど。声だけなのに圧が凄い。蒼と呼ばれた人もギクリとして、顔がこわばってる。 「……え!!!!」 俺は奥からのそりと個室に入ってきた人をみて、ひっくり返りそうになった。 ----- 「龍介さんにまさかこんなところで会えるとは思ってませんでした!!めっちゃファンです!」 俺は興奮が止まらない。だって、だってだって!自分が好きなバンドのボーカルが!俺の前にいる!彼は龍介といい、今爆発的に売れているバンドのギターボーカルを担当している人だ。先に入ってきた蒼くんは、龍介さんのバンドのマネージャーらしい。 龍介さん超カッコいい!白い肌にスッと通った鼻筋にこれまたキリッとした眉、そして強い目力のある目が印象的で、まさに漢って感じでカッコ良さが凄い!なによりオーラ半端ない!! 「裕太…龍介のラブソングきら「しかし、テレビで見てもカッコ良かったですが、生でみると尚更カッコいいですね!!」 星野がブスっとしている。どうせ俺が他の奴持ち上げてるのが嫌なんだろう。器、極小男だな。 「ははは、敬語。俺も同じ歳だから良いよタメで。蒼は二個下だけどな。」 おぉ!懐も深いな!まじで、漢だな!聞けば宗介と中学から友達だったらしい。 「兎に角、肉食おうぜ。肉。」 龍介さんがそう言うやいなや、さっとメニューを渡す蒼さん。蒼さん、出来るなぁ〜。龍介さんのコートも自然な流れで受け取ってかけてたし。梨園の妻かって感じ。 「既にこの盛りを頼んでますので、粗方きます。追加で食べたいのを頼めば良いかと。あと飲み物は龍介さんはビールですよね。お2人は何にします?」 いつの間にか頼んでくれてるし…。蒼さん仕事みたいな俊敏な動きで疲れないかな。しかし俺がフォローする隙もない動きだ。 「さんきゅなー。蒼のために野菜の盛り合わせも追加で頼むか…。あとは、上カルビとハラミと牛タンとヒレと…」 …龍介さん、めっちゃ肉食うな。みたまんまの肉食だな。 ---- 「ちょっと、うわっ……もっ……、すみませんっ、龍介さん、肉乗るせるの待ってくださいっ!あ、今、ホルモンなんて…っ!!」 「ははは、頑張れ消化活動。俺は早く次食べたい。」 龍介さんが肉を大量に載せるので焼き網に火柱が立ち、蒼さんがそれをあせあせと消化し、焼いてと葛藤している。微笑ましくもあるような、ないような…、そんな光景だ。 「しかし宗介の相手ってどんなかと思ったが、確かに小動物ぽいな。美味しいか?肉。」 龍介さんが頬杖をついて小馬鹿にしたようにニヤニヤと笑いながら聞いてくる。しかし俺は小動物と言われて少しムッとする。星野にリスと言われたのはまだ引きずってるんだ。龍介さん達に比べれば身長も低いし童顔で、肉食獣的な雰囲気もないけどさ。俺だって男だ。例えるなら強い動物にして欲しい。 「…美味しいよ。」 「ははは!反抗的だなぁ。」 ついぷいっとしてしまうと、龍介さんが更にニヤニヤする。こゆ嫌な感じは星野と同じだな。なぜこの2人が仲良しなのか、なんとなく分かってきた。 「い、いや〜、宗介さん見る目ありますね!宗介さんと相思相愛、とても仲良くされていると聞いてます。俺も裕太さんとは仲良くなれそうで嬉しいです!いえ、あの…、友達として。」 蒼くんが焦ったようにフォローに入ってくる。でも微妙な気持ちになるフォローだ。星野、相思相愛とか言ってるのか…嘘すぎるだろ。ジロリと星野を見ると、相変わらずニコニコしている。 「蒼ちゃんならいいよ〜。友達として付き合うなら。」 星野…お前の許可とかいらないから。 「そういえば、龍介さんと蒼くんは付き合い長いの?あ、そか。蒼くんがマネージャーしてからだから、長いか…。よく宗介と3人で飲んでるの?」 蒼くんはまともそうだから、濃い性格の2人相手は大変だったろうな。可哀想。しかし扱いを心得ているなら是非伝授して欲しい。 「…あ、いえ、俺は…」 蒼くんが言い淀む。 「?」 「蒼はそんなに宗介とは飲んでないよ。飲んだの一回だっけな?蒼は俺の可愛い彼女だから連れてきただけだし。何処でも一緒。」 「え、えぇ!!」 「…」 「はははは。」 男同士か…。てか、テレビや週刊誌でよく言われる龍介さんの謎の彼女って蒼くんか。しかしなんだか違和感。どやりとぐっと蒼くんの肩を引く龍介さんに対し、蒼くんは俯いて浮かない様子で黙り込む。そして何故か笑う星野。空気読め。 「宗介、笑ってんじゃねーぞ!お前の方こそ、この裕太とラブラブとか疑わしいんだけど。」 流石に笑う星野に龍介さんがムッとしたようだ。しかし、星野がここまで腐った性根の本性晒すって、本当に龍介さんとは仲良いんだな。 「む、裕太と俺はラブラブです〜。」 星野もムッとした様子で、俺にキスしようとしてくる。 「やめろっ。」 「ははははは。」 それを俺はいつものごとくぺしっとはらう。今度はそれを見て龍介さんが笑う。星野と龍介さんは本当に似たもの同士だな。 「裕太!酷い〜!!めっ!こんなこと、しちゃだめっ!」 「ははは、宗介、お前は好かれるどころかうざがられてるじゃねーか!」 星野が幼稚な言葉の割にイラついた様子で俺の手を掴んでくる。うざったいな、と思った俺の気持ちを知ってか龍介さんが笑いながら俺の気持ちを言い当てる。それを聞き星野は更に眉間にシワを寄せた。 「俺と蒼の方が仲良しだな!蒼は俺のこと大好きですぐに喘いじゃうし、おもちゃも大好きだしなっ。なっ?すぐ気持ちよくなっちゃうんだよな?蒼は。」 「…」 えっ……何?憧れの龍介さんから、まさかの変態発言でビビる俺。しかもこの場でそれを蒼くんに聞くの?何となくここまでの流れで勘付きつつはあったが、龍介さんは星野と同じヤバ目の変態だ…。そこでふと俺は思い出す。龍介さんのラブソングの狂気がかった感じ。こういうことか…。そしてふと蒼くんを見ると、気にしてない風に焼き肉を食べてるが、よく見たら顔が真っ赤だ。あとなんか……涙目?え、これ、大丈夫なの?無理矢理色々されてない?相手の合意をとる概念がないのも星野とお揃いなの? 「おい。蒼?」 しかも龍介さんは口の端を上げて嫌らしく笑い、しつこく蒼くんを問い詰める。いたたまれなくて止めたいが、威圧感が半端なくて怖い。龍介は星野より鬼畜度高めか…。蒼くんが可哀想…。助けろよと目線で星野に訴えてみるが、星野は星野で「え?おもちゃ欲しい?」とか聞いてくるし。馬鹿野郎か。 「あーあ、折角出してやったのに。なんなら蒼がどっちか分かるまで、ここでやってやろうか?」 「…っ!」 わわわわわっ!!ちょちょちょっと!待って待って!! 龍介さんが蒼くんに顔を近づけ、更に畳み掛ける。ちょっと楽しそうですらある龍介さんに対し、蒼くんは本気で泣きそう、何より嫌そう。龍介さんに唯一対抗できそうな星野は完全スルーで肉を食べており、俺は1人で焦りまくる。なんなの、このまともな神経してる人が損する空間。 「いや、あの、えと…、龍介さんのラブソングって蒼くんに向けてだったのか!蒼くんはどの曲が1番好きなの?いやー、全部いいから選べないか〜。羨ましい。」 とりあえず、龍介さんの気分を害さない方向で話を煙に巻こうと試みる。なんとか成功したみたいで、龍介さんが今度は好きなラブソングを言わせてる。それはそれで蒼くん嫌そうだったけど、前の質問よりかはましだろう。 ---- 「では、俺、次のお店確認してきます。」 そう言って蒼くんが個室の外に出ていく。何故…、こんな奴ら相手にそんないい子でいられるのか…。 「…蒼ちゃんは素直でいいな〜。やっぱり番契約が効いてる?」 ギクリッ 星野が羨ましそうに呟き、俺はギクリと反応してしまう。動きが思わず止まり話に耳を傾けてしまう。 「そうだなー。なんというか…前みたいに俺の前から逃げなくはなったかな?番契約を結ぶと離れられなくなるって、あながち嘘ではないと思う。言葉で上手く表現出来ないが、それは強く感じる。」 そう言って、龍介さんが俺をチラリとみで、口の端を歪めニヤリとする。つか、やっぱり前に逃げられてるじゃん。嫌がってるじゃん…。 「ふーん。それ…、悪くないね。ふふ、いや最高だな。」 星野もニヤリとして感想を呟く。 「だろ?」 個室内には嫌な空気が充満して、妙に静まり返っていた。星野を盗み見ると、横目でこちらを見た星野と目が合い思わずびくりとなる。もしこのまま星野と契約を結ばされたら…、俺ももう逃げられない?そう思うと凄く怖い。星野が、怖い。 プルルル…プルルル… プルルル… 「でねぇの?」 龍介さんが聞いてきて、我に帰る。そうだ、気づけば俺の電話が鳴っている。 「…あっ、…お、おう。母親からだ。ちょっと出てくる。」 「ふふふ、お義母さんによろしく伝えておいてね〜。」 星野の含みのある笑い。睨むことも嫌とも言うことも出来ない。だって俺は、星野と…。 ---- 母親からの電話は何気ない話だった。そのためすぐ終わる。そこでふと思った。そう言えば、蒼くんとすれ違わなかったが、何処に居るのだろうか?大丈夫かな。 まぁ、気にしすぎかなと思い直し、俺は気分転換にトイレで顔でも洗って戻ろうとトイレに向かう。 トイレにつきドアに手をかけて俺は止まってしまった。 「うぁっ…ふぅっ……やめっ、て、下さいっ…!」 「あぁ?何言ってんだよ。蒼が煽るからだろ。」 「嫌……こんな…こんなところで…嫌だ…いや…」 「うるせーな!言うわりにΩの身体は正直だな。ははは。」 「ふぅっ……うぅ…!くっ」 「あー、また。我慢すんなよ。つまんねぇ抵抗してたら、また繋いで、1から全部調教し直しだからな。」 「!うっ、ごめっ、なさい……やっ…です…!それは、はっ……それだけは…ふぁっ!ごめんなさい……うぅ…。」 ……まじか…。最悪だ。あんなに良い子なのに…、蒼くんがこんな目に合ってる…。明らかに嫌がってるのに、龍介さんとは離れられない。助けたい。しかし助けても蒼くんはもう、本質的にはもう助けられない…。番契約…。嫌だ。怖い。俺も星野とこうなるのか?そう思うと体が恐怖で震える。 「裕太。」 「!」 いきなり後に立っていた星野に話しかけられて、大袈裟にびくついてしまった。 「他人の聞いてたの〜?」 星野がニヤニヤする。 「…いや…。」 「ふふ、蒼ちゃん最近やっと外に出られたんだって。番契約を結ぶまで、ずっと龍介の家に繋がれてたらしいよ。」 「え?そんなっ…、そんなこと、許されないだろ…?」 怖くてその先が聞きたいような、聞きたくないような。星野が笑う。 「なんであれ、いいよね…。それも。」 目を細めてこちらを見下ろす星野。良く…、ないだろ…。まさか、そんな事、お前はしないよな?そう聞きたいが、俺には聞く勇気が出ない。龍介さんと星野は良く似ている。それを今日強く感じたから。 ---- その後はぐったりした蒼くんを龍介さんが引きずるようにして連れて帰り、結局一軒めで呑み会は終わった。酷い事をやっている割に、龍介さんは壊れ物を扱うように大事に蒼くんを抱えていた。その顔は本当に幸せそうだった。しかし俺はそんな龍介さんに不気味な矛盾を感じ、なんとも言えない気持ちになる。 帰り際、星野は自分の家に俺を誘うが俺は断った。星野は笑いながら言った。 「いいよ。…今のところは。」 「今のところは」ってなんだよ。今後どうせ離れられなくなるからって?俺はそんなの絶対にごめんだ。どんな事になっても俺は星野に屈しない。例え卑怯な手で番契約を無理矢理結ばさせられても。そう自分に言い聞かせた。

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