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第39話
星野の家政婦生活も、1週間ちょっとが過ぎた。俺も星野の家で無防備にダラける程に慣れてきた。
「今テレビ観てるから。」
「いたっ。」
風呂上がり、俺はソファの上で寛いでいたところを、のし掛かってきた星野を押し退けた。星野はわざとらしく右手を押さえて痛がる。
「痛がっても、もう騙されんからな。もう1週間ちょい経ったし、大体治ってるのバレてるぞ。」
「…」
星野は最近何かと痛がったふりで同情を集め、我がまま放題だと俺は気付いている。だからもう騙されないぞ!
「…そっ」
星野は案の定、痛いのは嘘だったようだ。あっさり諦めたように立ち上がった。
「じゃぁ、もう解禁にしよ〜。」
「は?…ぁふっっ!」
そして再び、今度は迷いも遠慮もなく俺に襲いかかってきた。星野の手がするりと俺の服の下に入ってくる。
「ちょっ、やめっ」
「だって、右手治ったらいいんでしょ?俺もう我慢できない〜。」
そう言って、寝転んだ俺を上から押さえ込み、首筋に顔を埋めてくる。俺は旅行後当たり前の様に襲われて、その時に右手が治るまでは心配だからセックスは辞めておこうと、あくまで星野を心配する体で提案したのだ。星野はぶーぶー言ったが、この約束は守られていた。確かに、もう治ったと俺が言うのは墓穴を掘ったに他ならない。
「やめっ!やめろって!恋人がやりたくない時に襲うのってどうなの?!」
これは結構真面目な俺の疑問だ。
「それ言ったら、恋人にずーっと我慢させるのはどうなの?」
そう言われると…いやいや、無理矢理したら強姦だろっ!普通、嫌がられたら辞めるだろ。流されそうになるも、踏みとどまる。
「こ……」
「こ?」
「今週末にしよ?次の日に会社ないとゆっくり出来るしさ。久しぶりだから、ゆっくりしたいな。」
「…分かった。」
俺の提案に、星野は渋々頷いた。
今週末。実は当てずっぽうではない。確か、星野は明後日からまた出張だ。国内なのが心許ないが…。俺はその隙にやろうとしている計画があった。
「でも、我慢した分いっぱいさせてね!」
そして星野が満面の笑みで提案してくる。
(はっ。もうお前とする事はねーよ!)しかし俺は、そんな星野を心の中で笑っていた。
「これだけ我慢させたんだから、裕太が俺のをお口で舐めて立たせて、そんで裕太が自分で入れて俺の上で動いてね〜。右手完治までは、裕太は俺の家政婦さんなんだから、それらしくね。あー、なんか楽しみ〜。」
「…」
ニコニコ王子様スマイルで恐ろしいことを言う星野に、俺はドン引きだ。
……な、なんとしても、金曜日は失敗出来ないな…。頑張れ俺っ!
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金曜日の夜ー
俺は早足で星野の家に向かっていた。星野は一応今日の夕方まで会議が入っていたから、帰りは深夜だろう。今が19時前だから、時間はあるようで、ない。
ガチャガチャッ
焦る気持ちが出てしまい、少し乱暴に星野の家の鍵を開ける。星野専属の家政婦生活は嫌だったが、星野の家の鍵を手に入れられたのはやっぱり大きい。
「えっと、……あったあった!」
俺は星野の家のダイニングでキョロキョロし、ダイニングテーブルに乗ったままの星野のノートパソコンを見つけると、そちらへ駆け寄る。
「?なんだ?勉強してたのか?資格試験とかうけるのかな??」
星野のノートパソコンの周りには、医療関連?の分厚い専門書が数冊あった。付箋がチラホラ貼ってあり、真剣に何か勉強している様子が伺える。少し気にはなるが、今はそれどころではない。そう、俺の目的は、星野が持っている俺関連の動画の一掃だ。本当は穏便に済ませたくて、色々と頑張ってもみたが、そろそろ限界だ。動画を一掃した暁には、星野との関係はこちらから強制的に切ろう。俺はそう決めていた。
「パスワードは…」
ノートパソコンを起動させると、パスワード入力を求める画面が出てくる。ここからは少し頭を使う必要がある…。本当は、パスワードも聞き出してからこの計画を実行する予定だった。
俺は数日前の星野との会話を思い出す。
『俺のパスワード、全部宗介関連なんだ。』
『え?何々、急に〜。嬉しいけど、どうしたの??』
『だから、宗介もパスワードは俺関連にしてよ…。』
『ははっ、そんな事?言われなくても既に、俺の持ち物全部そうなってるよ〜。』
『…お、おう…そうか…。じゃぁ、そこのノートパソコンのパスワードとかはなんなんだ?』
『ふふっ、何だと思う?』
結局あの時は、はぐらかされ、聞き出せなかった。しかし、俺関連…ならきっと分かるはずだ。てか、重たい女ぶるはずが、星野の重たさに逆に引いた。まぁ、あの変態との繋がりも後少しで切れる。
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