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第40話
誕生日、電話番号、会った日……他に何があるよ。
「ヤバい…ヤバい……」
俺は額の冷や汗を拭った。適当に入力すれば直ぐに解除出来ると思ったが、案外当たらない。
「あいつ、本当に俺関連のパスワードにしてんのか?全然分からねー!」
俺はガリガリと頭をかいた。時計を見ると、もう20時半を過ぎている。星野が帰るにしても、23時過ぎだろうから、まだ大丈夫だ。落ち着け。そう自分に言い聞かせるが、焦る気持ちはどうしようもない。
「んー、住所?あー、郵便番号??……ダメかー、……あっ。」
もたついている間に、ノートパソコンには充電を促すサインが出ていた。
「うわー、このタイミングで…。」
俺は電源ケーブルをノートパソコンに挿して、もう片方をダイニングテーブル下の電源タップに挿すべく、ごそごそとテーブルの下に屈んだ。
「よく見えねーな…」
星野のマンションは駅前にあるので、来た時は外からの灯りでなんとなく室内が見えた。しかし流石にこの時間になると見えない。暗い。
「よし……入っ……!」
電源コードを挿し終え、テーブルの下から出ようとして俺は息を飲んだ。
テーブルの前には、
「裕太、何してるの?」
星野が立っていた。暗くて表情はよく見えないが、声が冷たい。
「……なにも」
「俺のパソコン、勝手に見たの?」
「…見てません」
「…」
「本当にっ!その、…パスワードが分からなくて…。」
個人情報の詰まったノートパソコンを勝手に触られたら、誰だって不快だろう。だからせめて見てないと言うけど…。いや、これこそ恋人の重たい行動じゃないか?嫌になられる?とか、星野の様子にビビりながらも、淡い期待も湧く。
「そっか〜。とりあえず、出てきて。」
「…嫌だ」
しかしそんな俺の淡い期待も虚しく、次の瞬間はいつもの星野だ。
「え?なに?聞こえなーい。いいから。出てきて。」
「あっ、ちょっとっっ、やめろっっ!」
先日の会話を思い出し、嫌だとボソリと言うも、星野に強引に引っ張り出される。いつものニコニコした笑顔を貼り付けている。しかし俺を引っ張り出す力はめちゃくちゃ強く、容赦がない。
「裕太、この前の話覚えてる〜?」
「…」
俺はなにも言えない。この前の話は、もう既に星野と関係が切れているだろうと、それ前提だった訳で…。しかし星野は満面の笑みで、俺にねぇねぇと迫ってくる。
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「…ふぅっ、……んっぐっっ」
「ふー、いいね〜。裕太、相変わらず下手っぴだけど、久々だし、視覚的にくるねぇ〜。あっ、目線は俺の方ね。」
結局俺は逃げれなかった。ベッドに腰掛けた星野の足の間に跪き、俺は星野のものをくわえていた。顎は痛いし、頭を撫でる星野の手がムカつくし、不快感しかない。
「ふふ、小さいお口にいっぱい頬張って…はぁ〜可愛い。」
頬を撫でられ、眉をひそめるが、星野は相変わらずうっとりとこちらを見下ろして呟いている。
「ね、次は舌出してアイスみたいに舐めて。」
「ふっっ、ハァッハァッ、…もうっやだ!AVかよって!はっ、もうとっととやって終わらすぞ。」
「えー、裕太、ゆっくりしたいから週末にって言ったじゃん。約束でしょ?」
やらされるならやらされるで、さっさと終わらしたい。立ち上がり、星野の上にのしかかろうとしたところを星野に押し戻される。
「約束を歪曲するな。フェラして、やって終わりだろ。」
「裕太が約束破るなら、俺も約束破ろうかな。」
「な、なんの…」
「うーん、色々あるよねぇ〜。どれにしようか〜?」
ニコニコと話す星野。本当にこいつは悪魔かよ。
「…」
「じゃ、また仕切り直し。俺のにキスしてから、見せつけるみたいに、こっち見上げてペロペロしてよね。」
「…」
コイツはそんなAVみてんのか?唇を歪めて笑い、スラスラと卑猥な事を述べる星野を苦々しく見上げる。
ちゅっ
しかし、結局やるまで終わらない。早々に観念した俺は、小さく星野のものにキスをする。響くリップ音に頬がカァァァァッと赤くなる。なんで俺が、こんな変態じみたことを…。星野の強いることは、基本無心でやらなければならない。でなければ俺のメンタルがもたない。けれど、こうやって自分で何かする行為はダメだ。考えてると、泣きそうになる…。
「だから、目線はこっち!俺をみて。」
「…っふ」
なんか分からんが、唾液がドバッと出てくるので、それを擦り付けるように星野のものに絡め、レロッと音がしそうな勢いで舌をはわした。
「ぶっ、ふふっ。」
笑うんじゃねーよ。
星野が小さく吹き出し、笑った。馬鹿にされたようで腹が立つ。
「あぁー、もー、いいなぁ〜。」
少し上擦った声で、星野が興奮を隠さず言い放つ。俺のメンタルはズタボロだと星野を睨むが、更に星野のものが元気になるだけだった。そうだ。コイツはこういう類の変態だった。
「はふっっ…」
「…んっ。」
室内には湿っぽい空気が充満する。あれ、なんだろう…星野のものが…。体の奥から、得体の知れないむず痒い感覚が湧く。揺れそうになる腰を必死で押しとどめた。
ダメだ。俺は、星野のなんか欲しくない。こんな、変態じゃない。Ωだけど、そういう要求はちゃんと制御出来る。
星野の喉がごくりと、生唾を飲み込む様に動いた。
「ふっ、もういいよ。きてー」
「っ、」
ギシっ…
俺は素直に星野に従って、ベッドに乗り上げた。そして、視界に映った星野のものを凝視してしまう。あー、もうっ!くそっ!なんなんだよ!
ぐちっ
「…ふぁっっっ!あっっ。」
星野の上に膝たちになっていると、星野が俺の後ろの穴に指を入れてきた。
「ふふ、後も前もぐちゃぐちゃだね〜。」
「うっ、ふっぁっっ」
確かに、俺の後は既に星野が欲しいと言うかの様に、訳わからん体液で濡れていた。前もガチガチだ。
「裕太って、わりと淫乱だよね〜。可愛いけど、心配。…なんか付けといた方が良いのかな。」
流石に一瞬ムッとするが、その次の方が気になった。え、何?この変態、俺に何付けるつもりなんだよ…。
「あっ、ふぁっ……宗介っっ、もっいい…」
「え、もういいの?」
星野がわざとらしく確認してくるのが癪だ。しかしもはやそんな事にかまってられない俺は、星野から目を逸らしコクリ頷く。決して、決して星野のものが欲しい訳ではない。そう言うのではなく、早く終わらしたいからだ。そうそう。そうなんだ。
「ふふ、じゃ、入れてー。」
「あ、まって、コンドーム…」
「えー」
星野がなんか言ってるが、もう無視だ。俺は星野のものにささっとゴムをかぶせる。
そして微妙に震える手で星野のものを支え、挿入を試みる。やっと…
ツプリ…
「あっ…あぁっ」
星野の先がほんの少し入っただけで、体が喜ぶのが分かる。俺は小さく息を漏らした。そして、顔が緩みそうになるのを必死で押しとどめた。
あと……もう少しで…
更なる、大きな快感に、あと…少し…
まるで俺は、餌を前にした犬だった。
「あ、やっぱりストップ。」
「ふぁっ!?」
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