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第43話※星野視点
あーあ、消されちゃった。
《裕太、今晩ご飯しよー》
《裕太、昨日無視したでしょー。今晩は?》
《ね〜。》
《返事くれるまで連絡するよ〜。》
〈行かない〉
《え〜、明日は〜?》
〈もう俺に連絡するな〉
職場の昼休み、裕太に連絡を取るも冷たく返される。あれ以来、目に見えて冷たい。写真や動画がなければ、俺の言うことを聞く必要はないと思っているみたいだった。
「ちぇっ」
そんなの関係ないけど、つれないなぁ。嫌われているって自覚してたけど、こうハッキリされるとくるものあるじゃん?ちぇっ。
「星野くん、なんかあったの?」
「あ〜、佐野さん、こんにちは。」
部長に資料を届けに来ていた、秘書課の佐野さんが不意に話しかけてきた。
「星野くん、元気なさそうだし、ご飯とか奢ってあげようか?」
「え〜」
「先輩なんだから、少しは頼っていいのよ。」
元々女の子は好き。可愛くて気持ちいい。佐野さんも、綺麗で胸もでかいし、肌は白くて気持ち良さそう。昔ならホイホイされてたかなぁ〜。でも今は微妙。
チラっと裕太の席の方を見る。裕太の席は俺の席から何列か先にある。こちらに背を向けて座っているので顔は見えないが、俺は顔を上げるだけで裕太を見れる。佐野さんの事は裕太が可愛いって言っていた。さっきも裕太は昼休み返上で仕事をしてるくせに、チラチラと部長と話す佐野さんをみていた。こういうところ。女の子ってだけで裕太の恋愛対象なんだろ。
「ありがとうございます。だけど、大丈夫です。またお願いします。」
「ざんねーん!また、誘わせてね。」
「お願いします。」
そう言って俺がニコリと微笑むと、佐野さんは頬を赤らめて帰っていった。
俺は再び裕太に視線を向ける。裕太は仕事をしながらお昼ご飯を食べており、微妙にもごとごしているほっぺたがチラチラと見える。はぁ〜、可愛い過ぎる…。ただ淫乱なのは本当に心配だから、付けた方がいいかな。貞操帯とか?ぼーと裕太の背中を見てそんな事を真剣に悩んでいると、裕太が何故がびくりとして、こちらを振り返る。
裕太にも佐野さんにやったみたいに微笑むが、何故が睨まれる。あーあ、裕太には何で微笑んでも効かないんだろう。
キーンコーン…
昼休みが終わる音がする。
「星野くん。」
「はい。」
部長に呼ばれて振り返る。
「上で呼ばれてるよ。午後一きて欲しいって。」
「ありがとうございます。」
上。それは、俺の父親に呼ばれているっていうサイン。俺は自分のパソコンを持ち、父親のいる社長室へ向かう。
父親と対峙するのはここ何ヶ月で急激に増えた。それもこれも、裕太との未来のため。
「宗介、この前お前が出した企画中々良かったぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
「いい分野選択だし、よく考えたな。最近やる気になってくれて、本当に嬉しい限りだ。」
「いえ。」
「この計画は進めることにしよう。今みたいに実績を積んでくれれば、私も宗介を上のポジションに推薦しやすいし、この調子なら最終的には私の後も任せたい」
「はい。俺も頑張りたいです。」
父親との会話は短い。しかし、感触は良好だ。
「後は、跡取りが作れるような相手が居ればいいな。」
父親が探るように俺の顔を見つめてくる。
「あぁ、それは、問題もありません。決めてるΩの子がいるので。」
俺はそこで、何年かぶりに本気でにっこりと父親に微笑んだ。
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裕太に冷たくされて1週間が経った。未だ裕太は相手をしてくれないので、龍介と玲次、いつものメンバーで俺の家で呑んでいた。
「宗介めっちゃ嫌われてんじゃん。笑うわ。」
「はは、龍介も、蒼ちゃんに言う程好かれてないでしょ。」
「あー?蒼は俺のこと大好きだから。昨日も泣いて、大好きです、大好きです、愛してます。言ってたし。」
「それ、言わせてるでしょ〜。俺らは裕太の意思を重じているだけだし。」
「しかしお前ら良くやるな。大概にしとかないと、足元救われるぞ。やたら番契約番契約とかいうが、αだって束縛されるんだぞ。」
龍介と俺の言い争いを止めるかのように、玲次が割って入ってきた。玲次らしい発言だ。玲次はどがつくストイック。でも、性格は3人の中で1番どす黒い気かするんだけどなぁ。
「玲次にも早く良い人見つかると良いね。」
「はっ」
俺がにこりと微笑むが、鼻で笑われた。いつも通りの反応だなぁ〜。
「で、そんな変態フォルダ大事に作成していたお前が、いつまで裕太の意思尊重とやらで、野放しにしておくんだ?バックアップまだあるんだろ。」
ビールを飲みながら、龍介が聞いてくる。俺は思わず忍び笑いを漏らした。当たり前だよね。大事なデータ。何重にもバックアップとるものだよね?
「まぁね。」
「つか、なんで今自由にさせてんの?」
「はは、それね。ちょっと裕太勘違いしてるみたいだからさ、教えないとと思って。ちょっと自由に遊ばせてあげた後、お迎えに行くんだ。つかの間の自由の後、また俺の檻に入れたら、もう逃げても無駄だって分かってくれるかなって思うし。でも1番は、気が抜けてるところを、会いに行って、尻餅つくくらいびっくりさせて、そしたらどんな顔するのか見たいしさ。一種のプレイだよね〜。」
「……お前、裕太に嫌われてんの、そういうところだと思うぞ。」
「お前、気持ち悪いな。」
俺の最高のプラン教えてあげたのに、龍介には呆れたように言われた。玲次には冷たくの罵られた。
ま、いっけど。
裕太、そろそろお迎えに行ってあげるね。
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