45 / 63

第43話※星野視点

あーあ、消されちゃった。 《裕太、今晩ご飯しよー》 《裕太、昨日無視したでしょー。今晩は?》 《ね〜。》 《返事くれるまで連絡するよ〜。》 〈行かない〉 《え〜、明日は〜?》 〈もう俺に連絡するな〉 職場の昼休み、裕太に連絡を取るも冷たく返される。あれ以来、目に見えて冷たい。写真や動画がなければ、俺の言うことを聞く必要はないと思っているみたいだった。 「ちぇっ」 そんなの関係ないけど、つれないなぁ。嫌われているって自覚してたけど、こうハッキリされるとくるものあるじゃん?ちぇっ。 「星野くん、なんかあったの?」 「あ〜、佐野さん、こんにちは。」 部長に資料を届けに来ていた、秘書課の佐野さんが不意に話しかけてきた。 「星野くん、元気なさそうだし、ご飯とか奢ってあげようか?」 「え〜」 「先輩なんだから、少しは頼っていいのよ。」 元々女の子は好き。可愛くて気持ちいい。佐野さんも、綺麗で胸もでかいし、肌は白くて気持ち良さそう。昔ならホイホイされてたかなぁ〜。でも今は微妙。 チラっと裕太の席の方を見る。裕太の席は俺の席から何列か先にある。こちらに背を向けて座っているので顔は見えないが、俺は顔を上げるだけで裕太を見れる。佐野さんの事は裕太が可愛いって言っていた。さっきも裕太は昼休み返上で仕事をしてるくせに、チラチラと部長と話す佐野さんをみていた。こういうところ。女の子ってだけで裕太の恋愛対象なんだろ。 「ありがとうございます。だけど、大丈夫です。またお願いします。」 「ざんねーん!また、誘わせてね。」 「お願いします。」 そう言って俺がニコリと微笑むと、佐野さんは頬を赤らめて帰っていった。 俺は再び裕太に視線を向ける。裕太は仕事をしながらお昼ご飯を食べており、微妙にもごとごしているほっぺたがチラチラと見える。はぁ〜、可愛い過ぎる…。ただ淫乱なのは本当に心配だから、付けた方がいいかな。貞操帯とか?ぼーと裕太の背中を見てそんな事を真剣に悩んでいると、裕太が何故がびくりとして、こちらを振り返る。 裕太にも佐野さんにやったみたいに微笑むが、何故が睨まれる。あーあ、裕太には何で微笑んでも効かないんだろう。 キーンコーン… 昼休みが終わる音がする。 「星野くん。」 「はい。」 部長に呼ばれて振り返る。 「上で呼ばれてるよ。午後一きて欲しいって。」 「ありがとうございます。」 上。それは、俺の父親に呼ばれているっていうサイン。俺は自分のパソコンを持ち、父親のいる社長室へ向かう。 父親と対峙するのはここ何ヶ月で急激に増えた。それもこれも、裕太との未来のため。 「宗介、この前お前が出した企画中々良かったぞ。」 「はい。ありがとうございます。」 「いい分野選択だし、よく考えたな。最近やる気になってくれて、本当に嬉しい限りだ。」 「いえ。」 「この計画は進めることにしよう。今みたいに実績を積んでくれれば、私も宗介を上のポジションに推薦しやすいし、この調子なら最終的には私の後も任せたい」 「はい。俺も頑張りたいです。」 父親との会話は短い。しかし、感触は良好だ。 「後は、跡取りが作れるような相手が居ればいいな。」 父親が探るように俺の顔を見つめてくる。 「あぁ、それは、問題もありません。決めてるΩの子がいるので。」 俺はそこで、何年かぶりに本気でにっこりと父親に微笑んだ。 ---- 裕太に冷たくされて1週間が経った。未だ裕太は相手をしてくれないので、龍介と玲次、いつものメンバーで俺の家で呑んでいた。 「宗介めっちゃ嫌われてんじゃん。笑うわ。」 「はは、龍介も、蒼ちゃんに言う程好かれてないでしょ。」 「あー?蒼は俺のこと大好きだから。昨日も泣いて、大好きです、大好きです、愛してます。言ってたし。」 「それ、言わせてるでしょ〜。俺らは裕太の意思を重じているだけだし。」 「しかしお前ら良くやるな。大概にしとかないと、足元救われるぞ。やたら番契約番契約とかいうが、αだって束縛されるんだぞ。」 龍介と俺の言い争いを止めるかのように、玲次が割って入ってきた。玲次らしい発言だ。玲次はどがつくストイック。でも、性格は3人の中で1番どす黒い気かするんだけどなぁ。 「玲次にも早く良い人見つかると良いね。」 「はっ」 俺がにこりと微笑むが、鼻で笑われた。いつも通りの反応だなぁ〜。 「で、そんな変態フォルダ大事に作成していたお前が、いつまで裕太の意思尊重とやらで、野放しにしておくんだ?バックアップまだあるんだろ。」 ビールを飲みながら、龍介が聞いてくる。俺は思わず忍び笑いを漏らした。当たり前だよね。大事なデータ。何重にもバックアップとるものだよね? 「まぁね。」 「つか、なんで今自由にさせてんの?」 「はは、それね。ちょっと裕太勘違いしてるみたいだからさ、教えないとと思って。ちょっと自由に遊ばせてあげた後、お迎えに行くんだ。つかの間の自由の後、また俺の檻に入れたら、もう逃げても無駄だって分かってくれるかなって思うし。でも1番は、気が抜けてるところを、会いに行って、尻餅つくくらいびっくりさせて、そしたらどんな顔するのか見たいしさ。一種のプレイだよね〜。」 「……お前、裕太に嫌われてんの、そういうところだと思うぞ。」 「お前、気持ち悪いな。」 俺の最高のプラン教えてあげたのに、龍介には呆れたように言われた。玲次には冷たくの罵られた。 ま、いっけど。 裕太、そろそろお迎えに行ってあげるね。

ともだちにシェアしよう!