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第49話
星野がそう満足げに言い、上体を起こした。俺はもうその時には、頭がポヤポヤして、ひっきりなしにだらしない声を漏らし、体勢はずり下がり、ほぼバックの状態だった。しかし俺の右手だけが辛うじてヘッドボードに掴まっている。そう、全然、まだ屈してはいないんだ。
「裕太?裕太??」
「はぁっ……ふっ!あぁ!やめろっっ!」
「あはははっ、そうそう。裕太はまだまだ元気だよね〜。はっ、あ〜俺も、気持ちいい〜。」
お前《も》って…。俺《も》気持ちい良いみたいな言い方は辞めて欲しい。
「ふぅっふぅっうぅぅ〜ーーっ!」
「あはっ、またイッた?ハイペースだよね。何回イっちゃうかな〜?数えとこうか?」
「うるさっっーっ!!」
「んー、そう。まぁ、裕太がどんだけイっても、俺はペース下げないからね〜。どんどんイッちゃっていいよ〜。」
確かに、いつもよりも星野はやたらと攻め立ててくる。目がチカチカとして、息が、はくはくとする。
「ふ〜、しかしバックも良いよね〜。前は結構やってた気するけど…はっ、裕太とやるなら、キスしたいからっ、あんまりしなかったんだ…。」
「うっっあぁっーーっ!ぁっ!」
「はははっ、征服欲が満たされるってやつ?ふぅ、…ねぇ、裕太はどの体位が好き?」
黙るか、動きを止めるか、どっちかにしろ!どんな体位も嫌いだっ!!また……あっ、いくっっ!
「いっーーーっ!……はぁっふぅっふぅっふぅっっ!いいからっ、勝手に腰ふっとけよっ!」
「も〜、趣がないな〜。あぁ〜、バックだと、裕太の項も丸見え…美味しそう。」
「…うぁっっっ!」
そう言うと、星野は急に俺の項に噛み付いてきた。本当に番契約を結ぶみたいに、割と本気で噛まれた気がした。歯がガチガチ言って、思わず恐怖で完璧に丸まってしまった。遂に右手もベッドについてしまう。
「はっっ、っ!あ〜あ、右手も遂にダメだったか。項そんなに良かった?凄い締まった〜!」
「ふぁっ、馬鹿っ、急にっ……怖いからだよ!!」
「あ、これって怖いの?予行練習しとかないとじゃん〜。」
な ん の?
俺が恐怖の疑問を浮かべるや否や、星野は再び噛み付いてきた。
「やっっ!やぁっっ〜っっ!」
「はははは、バックだから、前に進んでも逃げれません〜。はい、捕まえた〜。」
俺はがむしゃらに暴れた。しかし星野に後ろから覆いかぶされ、簡単に捕まる。当たり前だ。こんな体位…。
「でも、手、ついちゃったね〜。気持ち良いってバレバレだね〜。」
「気持ちっっ、よくっないっっ!はぁっぅ……!!」
「うんうん。俺はいつまでも続けて良いよ〜?じゃ、またやろうね〜。折角くっついたし、おっぱいも触ってあげるね。」
そう言って胸に手が合わされ、またこねくり回される。更に律動も強まる。
「いっ、ぁっっっ!はっ、うっっーーー!」
また俺は盛大にガクついた。でも星野はやたら楽しそうに、律動は激しく、決して止めてはくれなかった。
結局、俺が《淫乱です。》やら《宗介とのえっち大好きです。》やら、馬鹿なセリフを言うまでその行為は続いた。
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「ふふふっ、」
会社の昼休み、俺はニヤニヤしていた。
《陽子ちゃん、今晩ご飯しませんか?》
〈裕太くん、お疲れー♡ご飯、嬉しい!いいよー!久しぶりのデートだね♡〉
可愛い!こんな……っ!幸せで泣きそう…。
《うん。そうだね!中々誘えなくてごめんね。急な誘いにありがとう。会えるの凄く楽しみにしてる!》
あぁ、早く仕事終わらないかな〜。
その後は浮き足だった気持ちで仕事をして、定時になると直ぐに退社した。無論、陽子ちゃんとのデートの為だ!軽く夕食を一緒にとり、その後は陽子ちゃんが行きたいという、水族館の特別展《夜間水族館》へ行くことになった。
「裕太くんとのデートも何回めかな?」
水族館のトンネルを通っている時、ふと思い出したように陽子ちゃんが切り出した。
「うーん、5回め?」
「そっか…毎回凄い楽しいの。いつもありがとう。」
「…うん…。俺も。」
俺も思わず照れて、目を下へ逸らしてそう言うと、ふふふと陽子ちゃんが笑った。
水槽のトンネルを抜けると一際大きい、天井まである大型水槽の前に出た。夜の水族館は大人のカップルがほぼで、照明は暗めで落ち着いていた。キラキラ光に反射する魚の鱗が綺麗だった。思わず見惚れてしまう。
「ね、裕太くん。」
「ん?」
「キスしていい?」
「ん、…え?」
俺が最後に見たのは、ふっと笑ってる陽子ちゃんで、次の瞬間はふにゃとした柔らかいものが唇に当たっていた。甘い、女の子の香りがした。星野の薄い唇とは違って、柔らかい。いや、そもそも、星野の強引なキスではなく、触れるだけの可愛いキス。
「あ、陽子ちゃん…」
「ふふ、何?」
「俺と…、つ…っ」
俺と、付き合おう?
これは、そう言いたい。そう言うべきな雰囲気。だけど、頭にチラチラと、王子様みたいに微笑む変態が浮かんで。
「つ?」
「つ………」
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