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第50話

(何故だ……!) 折角星野がいない3日間、フルで楽しまなければならないのに!!陽子ちゃんに言えなかった…。 (付き合おうって言えなかったぁぁっ!) 俺は星野の家で頭を抱える。星野は明日の朝帰宅予定だ。だから今夜は最後の夜を楽しむべく吉崎と陽気に呑んで、陽気な気持ちのまま布団に入るはずだったんだ…。そのはずが呑み会中も、帰宅した後も悶々としたままだ。 星野が頭に浮かんで言えないって、俺、星野が好きなの?いやいやいや、それはないないっ!よね?だって、男にしても、もっと変態性の低い奴が良い。星野とえっちするのは、まぁ、気持ちいいけど、いや、何言ってんだ俺。星野も少しは良いとこもあるけど、それらの良さを一掃する威力のあるサイコだもんな…。俺のΩの特性が星野のαに飼い慣らされてる?てか星野とあんな変態プレイ色々してるのにって抵抗?それってもう、星野のせいで人生狂ってるじゃん!どちらにしろ、星野のせいで色々狂ってる…。 色々な可能性が頭を駆け巡る。なんにしろ、星野と距離を取りたい。距離を取ればまた冷静になれそうだ。でも取れない!現にこうして呼び出され、星野の家に今もいる。俺、もはや星野の奴隷なんだよ…。ジレンマだ。 「ダメだ…。そうこうしているうちに、恐怖のサプライズされるかもしれない…。早く寝なければ…。」 恐怖のサプライズ。星野が出張から早めに帰ってくる事だ。星野が帰って来ても、寝過ごしたい。寝てても何かされるんだろうが…。うん。そんな変質者を好きとかない。 しかし、風呂に入って布団に入っても、未だ悶々とした頭はスッキリ出来ない。寝れない。寝たい。……寝れない! 「ダメだ……もう、全部忘れたい…。あ、そうだ。」 星野は、酒好きだ。出張で地方に行く度に色々な酒を買ってきては、家に溜め込んでいる。酒を飲んでも酔ってる風には見えないが、多分趣味だろう。俺は酒に弱くて飲むと大体眠くなる。だから酒を飲んだら寝れるかも。星野本人もガブガブとやたら呑んでるから、俺が少し飲んでも大丈夫だろう。 俺はベッドを出て、キッチンに向かい、戸棚を開けた。 「あったあった。」 棚の1番下の段に所狭しと並ぶ酒。その隅っこには、ワインクーラーもある。 「なんか…高そうだな…。」 勝手に飲んで因縁つけられてもな。未開封を開けるのは抵抗あるし、なんか瓶の細工的に高そう。 「あ、」 俺は思い出したように冷蔵庫を漁った。そこには、星野が飲みかけにしているワインがあった。飲みかけだしこれなら良いだろ。 俺は雰囲気も何も考えず、ただのグラスにそのワインを注いでぐびぐび飲んだ。…ワイン…まずっ。けど、頭と身体がホカホカしてきた。うむ。いい感じ。寝れそう。そう思いまたグラスにワインを注いだところで、スマホが振動した。 「…陽子ちゃんだ。」 星野かとギクリとしたが、連絡をくれた相手は陽子ちゃんだった。 《裕太くん、遅くにごめんね。今なにしてるー?》 こういう何気ない会話、本当に癒される…。 〈久しぶりにお酒飲んでたよ〜。陽子ちゃんは何してたの?〉 《裕太くんの事考えてたよ〜。「俺とつ」の続きなんだったんだろうなって。》 …。そうだよな。言われた方だって、あんな半端なの…。俺がどう返信するか考えていると、間髪を入れず陽子ちゃんからまたメッセージが届く。 《俺とつぜん眠くなる。とか、俺とつる見に行こう。あたりだったのかなと、私は思ってる(笑!》 陽子ちゃん…優しい。 俺はワインを一気に飲み干した。 〈あの時はごめんね…。〉 《大丈夫だよー。その人のタイミングあるし。ただ、私は裕太くんが大好きだよ。》 おお……。おお……。 俺はグラスのワインをまた一気に飲み干す。 〈俺も、す〉俺も。好き、うゎっ…、そう文字を入力したいのに、ぅう…、視界がぐにゃりとする。あと、凄い、吐き気。 俺はドタドタとトイレに走り、盛大にもどした。 その後俺はヨロヨロと部屋に戻り、口を濯ぎ、さぁメッセージを送信しようとするが、やっぱり視界が歪む。結局それ以上スマホに触ることすら出来ず、卓上のスマホをそのままに寝室のベッドへ倒れ込んだ。そのまま気持ち悪さとフワフワする奇妙な浮遊感を感じ眠りに落ちた。 夜中にガチャンとか、何か聞こえた気がしたが、もう俺の意識が戻る事はなかった。

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