60 / 63
番外編②の2
「裕太〜、お風呂沸いたよ。先にお風呂に入っていいよ〜。」
「…おう。ありがとう。」
煌々と明るい室内、意図的に明るいバラエティーばかり観た。大分、ホラーの余韻からは解放された。うん。これなら大丈夫そう。
「はぁ……散々だな。もうホラーは絶対に見ないぞ。」
脱衣所で服を脱ぎ、風呂場に入る。……ホラー観た後にシャンプーするのって怖い。妙な視線を感じたり。しかしうだうだしていても仕方ない。俺は意を決して、…しかし目は開けたままシャワーを浴びて洗髪をはじめた。シャンプーの泡が目にしみるぜ。
ゴロゴロゴロ…
外では雷が鳴っている。
……てかさ、まじで、今、
ゴロゴロゴロゴロ…ピシャッッッ、ドンーーッ!
「っ!!うわぁ……」
停電だ…。停電だけはやめてくれと願った矢先に…。
「どうしよう、どうしよう……」
ズ、ズズズ……
「!!」
オロオロと真っ暗な風呂場でしていると、隅の方で何かが動いた気がする。脳裏に、昼に見た映画の血塗られた殺人鬼が浮かぶ。
ドクンドクン…
いや、落ちつけ俺。なに考えちゃってんの。とりあえず、シャンプー流さなけば…。
ガチャ
「うぉっっ!!」
ドアが開き、大きい声を上げてしまう。顔を覗かせたのは、殺人鬼…。ではなく、勿論星野だ。当たり前だ。本当、なに考えてんの俺…。
「ははははっ、裕太、大丈夫〜?」
「宗介!!」
星野は俺を見て笑ったが、俺はそれに構ってられず、星野に駆け寄った。
「裕太、何そんなに怖がってるの?てか、身体ぬるぬるテカテカ…。なんか……エロ…。」
最後の方はボソボソと、星野が俺を見て呑気に笑って言った。くそー、なんでこいつは怖くないんだ…。
「宗介!これ、停電??」
「うん。落ちちゃったみい。この辺り一帯停電したみたい。復旧まで暫くかかりそう。」
「…え。」
そっか…。暫く…。へぇ…そっかぁ…。
「一応、此処にライトおいとくね。って伝えとこうと思って。」
ぽわりっ
星野は脱衣所の隅に、小さなライトを置いた。薄暗い小さな灯。色々な影がゆらゆらと辺りに映り、想像力が掻き立てられる…。主にホラーな想像力。星野の優しさ…?なのだろうが…。ないよりある方がいいんだろうけど、ぶっちゃけこれ超怖い。
「じゃ、俺、またリビングで…」
「ままま、待って待って…!!」
星野はそのままリビングに戻ろうとする。俺は全裸なのも構わず、星野を掴んでこの場を離れるのを止めた。
「どうしたの?」
「…あの………えと…一緒に、入る…?」
「え〜、でも俺、恋人とお風呂で2人とか、えっちな気分になるかも。お風呂で今週の回数消費したくないし……。」
回数…セックスの回数を週3回と決めさせたから、その事を言っているようだ。
「いいっ!!もう、そんなのいいから!」
「え?いいの?俺がえっちな気分なって衝動を抑えきれなくても、回数にカウントされない?カウントされないなら、一緒に入ってあげてもいいけど?」
「……っ」
見ると、星野は楽しくて堪らないと言った風に、ニヤニヤと笑っていた。
こいつ!わざとだ!!泊まりに誘わない所から薄々気付いてたけど…!『入ってあげてもいい』とか、本当…。
しかし、ここでダメと言えば、1人で風呂か…。仄暗い、水場で、1人。なんてか、それって凄く、ホラーだな……。
ゴロゴロ……
「!!」
迷っていると、また雷の音がしてビクリとした。
「…イ……イイヨ…。」
「…あはっ、もー、裕太は仕方ないなぁ〜。」
----
ザーーーッッッ
「ふー、温まる〜。気持ちいいね〜。」
「……そうか。」
星野は後ろから俺を抱きしめて、湯船に浸かった。星野に触れられ、警戒心で俺の身体は限界まで縮こまる。
「裕太は?気持ちいい?」
「ん。もっ、あんま、触んなっ!」
後ろからぬらりと乳首を触られる。
「湯船狭いし〜、それは無理〜。」
「ふっ、あっ、やめっっ…!」
乳首をコリコリとさすられ、俺の意に反してビクビクと反応してしまう。
「ふふ、裕太さ、えっちする時、乳首触られるの超嫌がるし、実は結構性感帯でしょ?」
「んっ、違っっうしっ…っ!」
「ふーん。あそ。………ねぇ、このまま乳首だけでイッてみてよ?」
「はぁ?!……っ!」
星野は俺の肩に顎を乗せ、耳元で囁いた。バシャバシャと抵抗するが、手を押さえられる。
こんなっ、気持ちいいと認めたくない。けれど、認めたくないと思っている時点で認めてるような。あぁ、もう、なんか、思考が、変。
「ど?いけそう??…ふふ、裕太、ふるふる震えてる〜。はぁ〜、かわい…。」
依然として俺の肩に顔を乗せたままの星野が、そのまま俺の耳を舐め上げてくる。背筋に妙なむず痒さが走った。
「ばっ、うるさっっ……ふぅっ……っ!」
ギリギリで耐えていた所を、そのひと押しで落とされる。本当…もう…俺の身体ぁ!!しっかりしろ!
「おぉ!!まじかぁ。イッた?」
「ハァッ……っ、ふぅ、ふぅ…っ」
星野が後ろから、ねぇねぇと煩い。今日初めて、室内が暗くて良かったと思った。だって明るかったら、俺が出したのがきっと見えてしまってる。
「ま〜、聞かなくても分かるから良いけど。」
なら聞くな。
星野はそう言って、へたった俺を引き寄せ強く抱きしめた。
「はぁ〜。お風呂で裕太とくっつくの幸福過ぎる〜。んー。」
「んっ」
そして、俺の首筋に顔を埋める。達したばかりで敏感になっているから、星野の髪や肌が触れてむず痒い。もうそろそろ離れてくれないかな…。
「ねっ…」
「っ!」
そのまま数分その状態でぼんやりしていたら、星野が妙に艶っぽく話しかけてくる。しかし俺がギクリとしたのは、背中に当たるものにだ。
「裕太、やっぱり俺、衝動抑えられない。」
「っ、あのっ、俺、ちょっと、のぼせたから…もう、キツイん…だけど…。」
これはちょっと本当。雨で気温が下がったとは言え、流石にこれだけつかっているのぼせてくる。
「…じゃ、上がってからしよ?」
「………」
そうですか。
----
「ふぅっ、あっあっ、んっ……っ、くっ!」
「はっ、でも久々お風呂でしたかったなぁ〜。」
正常位で俺を貫きながら、星野が呑気に漏らした。
「ふっ、今日の裕太っ、っ、超可愛かったし〜。」
「うゎっっ、くっ…!んっ、」
毎回思うけど、こいつもガツガツ動いて良くペラペラ喋るな…。
星野の顔が近づいてきて、反射的に顔を背けようとするが、顎を掴まれ強引にキスをされる。
「〜〜んっ!!」
そのまま乳首を刺激され、俺は呆気なく達する。
「ふふふ、えっろ。」
星野がそんな俺を見て、うっとりと失礼な事を呟いた。
「ハァッ、ハァッ……宗介、も、やめろ。これ以上はカウントするぞ。」
「えー!お風呂で約束したでしょ〜。」
「ここ、寝室だから。」
「何それ?新ての詐欺〜?」
毎度毎度、詐欺みたいな事するお前に言われたくない。
「無理〜、途中までして止めるとか。」
そう言って、星野が再び律動を再開する。
「ふっ、あっ、ちょっ、調子のるなっ!」
ドンッ
「たっ!」
おぉ!大体暴れても空振るやつが、今日は綺麗に星野に当たった!俺はささっと星野から距離をとる。
「た〜、もー、裕太〜。」
星野が腹をさすりながら、むくりと立ち上がる。
「宗介が、むりや」
ガタンッ
「わっ!……」
「……」
ゴロ…ゴロゴロ……
ガタガタ…
何処かで物音がする。外は風が強いみたいだから、そのせいか…?
ちょっ…、折角頭からホラーがなくなってたのに…。
ガタガタッ
「!」
また物音が外からして、俺は思わず星野にしがみついた。風か。風だよな。マンションの上層階だからな、ここ。そりゃ、風の音も大きく聞こえるよな。
「ふふ、裕太、」
「あ」
はっと見上げると、星野が俺を抱きしめ笑ったいた。そうだ俺。なんで、また星野なんかにしがみついて…。
「おかえり。」
「ふぁっ、」
そう言って星野がキスをしてくる。
「裕太が回数がどうのとか、可愛くない事言わなきゃずっとそばに居てあげるけど、どうする?」
ニタリと、殺人鬼よろしく星野が笑った。
ともだちにシェアしよう!