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第57話※陽子視点
「陽子ちゃん!ごめん…こんな事に巻き込んで、本当にごめん!!星野は…星野は……本物の変態なんだ…!」
「え。」
あの行為の後、星野くんはシャワーを浴びに行った。先にシャワーを済ませた私と裕太くんは2人、気まずい雰囲気の中にいた。その張り詰めた空気を、裕太くんの謝罪が打ち破る。
てか、そもそも、最初のローター我慢からめっちゃ私の趣味だったんだけど…。ま、星野くんも言う割にノリノリだったけど…。勝手に便乗して、最初から全部動画と写真撮りまくってたし。というか、星野くんが全部の首謀者だと思ってんの?このまま、いい人のフリしたら裕太くんは簡単にまた私になびくかな?
少し心が揺らぐ。しかし…純粋に星野くんには裕太くんを思う気持ちの負けを感じた。だから…
「裕太くん、いいの。全部本当に私がしたかったことだから。逆にごめんね。」
「…え。」
「寧ろ、私にしたらラッキースケベ的なやつ♡」
そう言うと、裕太くんはあからさまにガーンっと言う顔をするので、ちょっと笑ってしまう。可愛い。きっと、裕太くんは本当は分かってる。てか私、行為中も私の趣味だと言ったし。きっと裕太くんが認めたくないんでしょ。
「裕太くん、なんで浮気なんてしたの?」
「……」
裕太くんは黙り込む。私はその姿をみて、星野くんと最初に会った時の会話を思い出していた。
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「そのかわり、陽子ちゃん、俺と裕太のキューピットになってよ〜。」
「はぁ?」
キューピット?恋の?それ、普通は付き合う前にお願いするのでは…。本当に恋人同士なの?
「裕太に俺をお勧めして?」
「……星野くんが裕太くんと付き合ってるって、裕太くんもその認識なのよね?」
星野くんは最初見たときは雰囲気が柔らかくて、大きな垂れ目が印象的な優男という雰囲気だった。着てるスーツも細身でお洒落、清潔感もある。真面目な雰囲気の中に、華やかさがある。私は裕太くんみたいな可愛いのが好きだけど、この人モテるんだろうなと思った。ただ、裕太くんの話をしだすとその雰囲気は一変、目が据わり狂気をはらんでいた。だからこの発言には、邪な気持ちを置いて純粋に裕太くんが心配になった。
「…」
私の質問に答えず、星野くんがにっこりと笑った。……本当にイケメンの無駄使いだな。
「そこは、陽子ちゃんが気にするところじゃないから。」
…。
星野くんの返答には、察するものがあった。
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他人からアプローチしてもらうって常套手段だけど。難しい。今までのやり取りから、星野くんが裕太くんにどう思われているか分かった気がする。
「星野くん、カッコいいし、裕太くんを愛してるって感じは凄く伝わるよ。私も、星野くんの愛には負けたって思ったから、裕太くんを諦めたんだよ。」
まずはジャブ。裕太くんは、私の説得に苦々し気に顔を歪めた。あ、ダメかー。
「俺は…俺は、星野のこと「あの!でもさ、」」
ちょちょ、今好きじゃないとか言おうとした??星野くんこの会話を聞いてるかもだよ?!そうなったら本当に怖いよ!!私は内心焦った。裕太くんの事ペット感覚でも割と好きだったし、不幸にはなって欲しくない。見るからに今不幸だけど。
「裕太くん、女の子に憧れて抱いちゃってるでしょ?」
「……そりゃ…俺は、男だし…。可愛い女の子を幸せにしてあげたい…」
なんじゃそりゃ。
「それなら星野くんを幸せにしてあげたら?裕太くんなら凄く喜ぶと思うよ。」
「………星野は可愛くない。男だし…女の子がいい。」
そこか。
「見ようによっちゃ、星野くんも可愛いじゃん。ゴールデンレトリバーみたい。」
「………陽子ちゃんって、誰でも犬に例えるの…?」
裕太くんが涙目で私を見上げてくる。性癖は、仕方ないやろがな。しょんなかっ。
「……いや、そうじゃなくて…。…なるほど、つまり裕太くんは男同士に偏見あるんだね。星野くんの純な気持ちも、偏見の目で見て気持ち悪いとか思っちゃうんだ。」
「…」
少し冷たいトーンで言うと、裕太くんが押し黙る。正直、星野くんこそ邪の化身感あるけど。それは置いておく。何とか論点をすり変えねば…。
「それはちょっと酷くない?例えば、周りで男同士で付き合ってる子いないの?その子達の事も否定する事になるよ。」
裕太くんが考えるそぶりを見せて、微妙な顔をした。やはり、周りにも男同士で付き合ってる子がいるんだろう。
「今までの星野くんは悪い面ばかり目立ってしまったかも知れないけど、いい面もちゃんと見てあげたら?偏見持たずにさ。」
「…」
「まずは、きちんと受け入れようと思って向き合う事が大丈夫だよ。」
裕太くんは私の言葉に『そうだな。』という顔で小さく頷いた。
え、納得…しちゃった…?
まじかい。ちょっと自分で言ってて心配になる。最後あたりは強引に誘導しちゃったけど…。まぁ…星野くんからは逃げれ無さそうだし、どうせなら穏便にやられた方が裕太くんにも良いのかな…。
私は騙しているようで妙な気持ちになり、無理矢理自分に言い訳した。
「ね。誰と付き合うでも、相手の良いところは見てあげないとね。相手の嫌な所ばかりみて否定してばかりじゃ、誰とも合わないよ。案外、目の前の人との間に本当の幸せがあるかもだよね。」
「…」
「あ、私じゃなくて、星野くんとって意味。」
「…うん。」
裕太くんはしゅんと項垂れる。頑張れ。
「ほらっ、もう…しょんぼりしないでっ!………おっぱい触る??」
「え。そ「裕太ー?」」
私が流石に可哀想だと思い裕太くんを慰めていると、絶妙なタイミングで星野くんが部屋に入ってきた。
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