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第5話

いつか、おはようと声をかけられるかもしれないと期待をしていた? 肩を借りてごめんなって、俺にもクラスのヤツらと同じような態度を向けられると思っていた? 俺は、何を思ってずっとこうしてきたんだ? 悔しい。 どうして俺ばかり、こんな思いをしなければならないのか。 どうでもいいヤツであれば、こうして考えることはないはずなのに。それができていないということはつまり、俺にとってそうじゃあないということ。 「ムカつく」 けれど、榛名は俺のことを考えない。それがさらに苛立ちを増幅させる。そうだ。榛名にとって俺はどうでもいいヤツなんだ。 隣にいるのに会話をしない。後ろの女子とその他の女子と、榛名と同じような雰囲気を放っているオシャレな男子と、ワイワイやっているだけ。 どうせ俺は、榛名とは違う人種だよ。 休み時間の楽しそうな声を聞きたくなくて、俺はうつ伏せになって目を瞑った。 榛名と隣になって、1ヶ月が経った。同じく車両をかえて肩を貸さなくなってからも1ヶ月経った。 やはり交わした言葉に特別なものはなく、グループワークの際の「内田は? どう思う?」の回数が増えただけだった。 その度に、話はしなくても名前は忘れられていないと嬉しさがあり、それを自覚する度に苦しくなった。 そうして今日、早めの席替えがあった。俺は運命かのように同じ席になり、榛名は窓側の一番後ろになった。 これでもう、何一つ接点がなくなった。それを気にしているのは俺だけだと、「じゃあな」の別れの挨拶もなしに、榛名はあっけなく移動していった。 その背中を見ていると、少しだけ胸が苦しくなった。

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