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第8話

俺ばっかり。 榛名のバカ。お前にとっては背景でも、俺には心があるんだ。 自分の膝の上で手を握りしめる。肩に力が入ったからか、榛名が少しだけ動いた。 「内田」 「え?」 「そういうとこ、好き」 「え?」 「お前のそういうとこ、俺、ずっと好きだったよ」 目を開けないで寝言のように榛名はそう言うけれど、俺の名前がはっきりと聞こえたから、俺に向けての言葉がであることだけは理解できた。 だけど、好きって、何が? そういうところ? 「お前の肩、寝心地良いんだよ」 「え?」 「俺専用なんだから毎日ここにいてもらわなきゃ」 「え?」 「内田お前、さっきから、え? しか言わないんだな」 「……っ」 榛名が目を開けた。俺より茶色が強いそのキレイな瞳でじっと見つめられる。榛名の瞳の中に俺が映っているのが見えた。 「俺のこと、気になってたまらなくなってきた?」 「え?」 「え? は、もういいから」 クスクスと榛名が笑う。お前の間抜け面が可愛いなって。 ああ、ダメだ。俺の名前以外の榛名の言葉が、聞き取れてはいるけれど、理解ができない。 今、何が起こっているんだ? 「榛名、さっきから何言って」 「何に聞こえる?」 「だからそれが分からないって」 「え? の次は、分からないって?」 笑う度に動く、榛名のキレイな睫毛に、俺の心臓も振り回される。知らない。こんなふうに優しく笑う榛名を、今まで一度も見たことがない。 「内田」 「な、に」 「内田任真(とうま)」 「……え?」 榛名が俺の名前を呼んだ。1ヶ月ちょっと前までは、内田だっけ? 内村だっけ? なんて言っていたくせに。 目を細めて、目尻に優しいシワなんか作ったりして。それでいて、穏やかな声で、どうして俺の名前なんか。 心臓を握りつぶされそう。 「そういう驚いた顔も、可愛いね」 「だから、どうして」

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